【主訴】
ドライブが安定して入らない
【指導時現症】
20代前半男性、フォアアレス、バック表
卓球経験は中学のみ、ブランクを経て最近始めた
普段のプレースタイルはフォアは無茶うちとアップダウンサーブ用、バックで変化を付けて得点
フォアからの得点は出来なくともある程度は試合が出来るため諦めは付いていた。
コミュニケーション良好ではあるが、専門用語を用いた会話は苦手そうな印象。
かみ砕いての指導が不可欠。
【指導法】
3Hit+CCを感覚的に理解できるよう、オーダーメイドで条件付けする。
【指導経過】
指導前からドライブ、スマッシュ共に思いっきり打つものという意識が高い。
後ろから前のスイングが主であるが、「かける感覚」と「弾く感覚」の意識はある。
しかし、それが安定して出せる物理条件が後ろから前のスイングがベースに有る為に理解できておらず、加えて彼が思う「ドライブっぽい打ち方」と「スマッシュっぽい打ち方」の差が明確に理解できているわけでは無いため、どっちつかずで不安定になっている。

今回は3Hit+CCをより直感的に理解できるような手順を踏む為に、一つの技術に絞った解説にした。
ループドライブを打たせてみると、力んでスピーディーなボールを出してきた。
それ故にまず、ループドライブは力を抜き、スピンを利かせることから始めた方が安定させられることを理解させることを第一目標とした。
3Hit+CCで打球する為に
(1)しっかり引き付けること
(2)ラケット下半分で打球すること
(3)打球後は横にスイングすること
(4)ラケットをボ-ルよりもちょい下辺りからスタートすること
(5)ループドライブ時はラケットを立てて、縦面(グリップ~ラバー先端の向き)でインパクトすること
を意識させた。
(1)を満たすことが出来れば(3)を満たすことは簡単になるし、(2)を満たすためには(1)が出来なければならない。(5)を満たそうとすれば自然と(3)になることが多く、(4)を満たそうとすれば(5)がやりやすいことなどを、その都度指摘し、(1)~(5)は断片的に見えてそれぞれにシナジーがあることを実感させた。
結果的に楽にループドライブが出来るようになった。しかし、体の向きが不安定で無駄に動く場面が多々見られた為に、サーブ後に相手の腰を向けることを意識させた。
元より肥満よりの体型であったのも好転して働いており、過度な左足前の体勢では無く、平行スタンスであった為、上記アドバイスはすんなり受け入れて貰えた。
一通りボールを待ってかけることが出来るようになったところで、次はスマッシュの打ち方の指導をした。
かける動作は必要ない為、上記手順のうち(1)、(3)に加え、ラケットとボールの高さを同じにすることを条件に加えてループドライブに対してのカウンタースマッシュを練習させた。
ループドライブとなると、ボールの軌道が変化する為、ボールの軌道をよく見てラケットの高さを合わる技術が必要となる。
それ故に、まずは速いボールを出さなくていいから引き付けて当てることから始めた。
徐々に待てるようになってきたところで、待ってちょっと振ることを指導した。
ここで一通り待つことと、待った際のスイングを理解できてきたことを確認し、よりスイングを小さくして、最小感覚としての3Hit+CCの習得に着手した。
より振らずに最小のスイングでドライブもフラットも出来る事をフォア打ちで確認。
より少しずつ下がっていくも、少し振ればドライブが安定することを理解させることができた。
「プツッ」って切れる感じこそが、最小の感覚単位であり、ここに立ち返りさえすれば全ての技術を組み立てなおすことが出来る事を指導。
これを実践の中で、弱い力を安定して出せるように短いサーブをフリックする練習をさせた。
フォア打ちの待つ感覚で順横~順横下に対して8割程度の確率でフォアフリックが入るようになった。
ここで最小感覚としての3HitCCと、物理条件としての3HitCCが理解できたと解釈し、指導を終了した。

【考察】
普段はフォア打ちから指導を始めるが、今回はループドライブからの指導と新鮮な方法を取った。
もとからボールに強く回転をかけることが出来、サーブも種類が多用に出せた為に、待ち方さえ教えれば簡単に指導することが出来た。
元より回転をかけることが出来るならば、一つの技術から他全ての技術に至るまで波及させていくのは可能と考える。
この回転をかけることが出来る時点で、ボールに対しての当て方の理解は元よりあるため、様々な方向へのスイングを元から出来る。それ故に指導時間の短縮に至ったと言えるだろう。
課題として、この指導法の場合は回転の絶対量を持っていることが大前提と言える。
回転の絶対量を持つとはすなはち、スイングスピードがあるということ。
スイングスピードを上げることでボールの回転量を上げるorボールスピードを上げることができ、その幅があればあるほど指導も簡単になる。
元から微上しかかけることが出来ない選手であればこうも上手くはいかなかっただろう。

【今後の展望】
3HitCCの考え方を感覚的かつ論理的に教えるにあたり、なぜそうするのかを、場合分けして「この時はミスする」といった形で指導することで、解剖学的解説をすることなしに理解させることは可能だった。
相手を見て、こうした指導を続け確立させていける日も遠くはないだろう。