夏に書いた記事:ツッツキ合いが生じるレベルの女子卓球の研究。 の追加事項です。
もう大会に関わることは無いし、女子のベンチに入ることも無いので惜しげもなく書こうと思います。今大会のうちのエースダブルスにはこれさえやってりゃベスト4以上、とサーブレシーブの戦術を1つ持っていかせましたが結果はどうでしょうか。。。


パワーが無い女子に対してはシステムが組みやすい。 

もうこれは女子卓球を研究されている方にとっては自明なことかと思います。もし仮に「え?何それ?」と思われる方がいた場合は勉強不足かもしれません。。

日本女子卓球もかなりメタられており、打点を落としたボールが弱いのはやはり狙われている印象を受けます。対日本メタとしては、それこそ張本対策と同様にスピンの効いた遅いボールが代表的で、幾分小兵が多いのもあり、ミドルで崩して両サイドに振ればあとはリスキーなプレーはしなくてもいい、そんな主張が中国のプレーからは垣間見えます。

といっても甘くなればぶち込んでくる今の日本代表に対してそれを遂行できる中国選手の技術力は特筆すべきもの。しかし、得点が出来る戦術の軸がしっかりとあり、それを体現できる技術力があって、それをやり切るメンタリティーこそ最も強力な気がします。

日本勢も振られた時に相手に触られないコース取りが出来ればいいのでしょうけれど、中国勢のコース取りシステムがあまりに完成されていて、サイドで抜ける展開がそう来ない印象さえ覚えます。
結局はサーブレシーブでシステム外のプレーをさせることが出来なければ、アドが取れない。


そう、サーブレシーブでシステム外のプレーをさせるというのは、どのカテゴリーでもその階層に応じたシステムがある中で、最も重要と言えるでしょう。

私が監督業をする際主戦場としていた、医学部系大会(県8程度の選手がトップ層)においては、

低いツッツキにはクロスに緩いループしか来ない
バックドライブはクロスにしか来ない
ダブルスでロングサーブに対してはクロスに強打しか期待値を保てない
バックにナックル性のボールが来てもバックでぶち抜けない
ダブルスのサーブは基本出ている
フォアへのループドライブに対してのカウンターの期待値は低い
フォアクロスのラリーが弱い

など、ざっと挙げただけでこれだけの特長があります。
無論例外もありますが、そうしたプレーの期待値が0.5点を超えることの方がレアです。まぐれといっていい。
勿論全日本ジュニアで4回戦まで行った、みたいなバケモノプレイヤーであったり、インハイに個人で出た選手がいたりしましたが、その辺はもう対象外。うちの選手もメンタル負け、萎縮して全く勝負になりません。

上の3、4人くらいはシングルで上記の特長を飛ばしてはきますが、ことダブルスになればいくら強い選手でも相方は弱い為、ほぼ全例上の特長が当てはまります。

つまりは、このレベルのダブルスはハメられる、ということです。

前記事でそのハメ方の手順も様々書きましたが、この手順の最も基本的な考え方としてぶち抜きできない条件で打たせた時、それはクロスに来る確率が非常に高い、ことが挙げられます。

私が女子にシングルスで教える卓球は、自分から打つならば相手から早めのボールを貰い、力を入れずにストレートorクロスサイドに巻いてにぶち抜くことですから、自分から点数を取るのはかなりノーリスクです。というのも自らぶち抜きしやすい条件を整えて打つわけですから、頑張って起こすのとはわけが違います。だからこそナックル性のロングや、アップ系のロングをバック奥に出してから三球目を狙うパターンや、レシーブならば切れてるボールがまず来ないわけですからバックドライブからボールを飛ばして次のプッシュを狙う展開なんかがリスクが少なくて期待値も高いわけです。

ダブルスでも今大会サーブ権がある時には「適当にハーフロングとロングサーブをアップダウン入れて出して打たせたボールを少し距離取って軽めにクロスにカウンター、打たれなかったら打たせろ」とあくまで相手に打たせることを意識して、自分から起こしたり、ツッツキ対ツッツキでリスクを負うことを避けることを指南しました。

レシーブ時もとりあえずバックにナックル性に流して(高いチャンスボール気味でも別に良し)、バックで触ってきたら次をぶち抜く、打たれたらストレートにブロックして次をカウンター、という風に相手に難しいボールを打たせて、自分はブロックするだけと簡単な技だけで済むように指南しました。

打たせて狙う、というのはメンタルが弱いとなかなか実行できないかもしれませんが、ぶちぬきは気にしないと思い込むことができれば案外やりやすいものです。



・・・実際どうなっているかは知りませんけど。


このレベルの女子卓球においては触れないぶち抜きを打つのはよっぽどパワーが無いと連発するのは困難です。たまに一発入る位ならまあまぐれ。ならば、それがたまに入るかもしれないけれど、打ちミスもしくは打ってもブロックできるボールしか打てないボールを送り続けて打たされている印象を植え付けながら、より慎重にかけて入れてくる状況に押し込んだ方が有利になりやすい。

あとはより相手が慎重になってくれるように味方を応援して味方の士気を上げて、それを相手にまざまざと見せつけることで相手ベンチに悲壮感を漂わせ「大丈夫大丈夫、入ってるよ」「強気だから大丈夫だよー」なんて言わせておけばもう勝ち確定ですね。

「打たされていることに気付くことなく、いいプレーをしているのに負けているといった印象付け」が完成したら、雰囲気読めるベンチがいない限りは打開不可能です。

事実、前の大会でもこの雰囲気まで持ち込めたら打開されることはありませんでしたし、唯一打開された際はこちらの自滅でしたから。。

確かに、この自滅も要注意です。
一応相手は「いいプレーをして点数をとる」こともある為にそこに萎縮してしまっていては継続した期待値ゲームで勝つのは不可能です。



とまあ、総じて「舐めプ」ですね。

相手のいいプレーは「まぐれまぐれ~」と無視して、ひたすら相手に打たせ続ける。
そして入ってきた自分が取れるレベルのボールだけを狙い撃つ。
その道中で相手にミスも出るだろうから、トータルでは勝っている


日本人が大好きな相手に思うようにさせない発想(弱気な受け)ではなく、相手が思うこと(相手が強いと思うこと)をさせる発想(強気な受け)で、展開を縛り付けてメンタルブレイクを狙う。

その程度だろ?と小馬鹿にしていないと出来ないパターン攻めですね。


こんなシステムを今回もしれっと一言教えてみたので、メンタルブレイクさえなければまたいっぱい勝ってきてくれると信じています。ほんと、メンタルさえ持ってくれれば・・・