ペン粒と一口に言ってもスタイルは様々。裏面を振るのか、反転をするのか、守備系粒か攻撃系粒か、粒の醍醐味である「揺れ」にしてもオートマティックな変化を求めるのか、それとも操作性を担保しマニュアルな変化を求めるのか、その人の思想・卓球観に基づく。

これまで私がゲームをしたことがあるペン粒と言えば裏面で振ったり、反転して裏でかけたりが俗に言う色物だろうか。
1つずつ挙げてみれば、粒にしてもただの止め専の弱い選手、前後の揺さぶりに催促を織り交ぜ止めるにしても意図的に打たせることでメリハリを付ける選手(水谷と練習していたS先輩)、世にも珍しい上ナックル専(全日学出てましたね)、ペン粒なのに全く止めずに普通に表のように使う選手(有段者のお医者さん)など。
粒の扱い方にもかなりのバリエーションがあり、その中でも有段者と勝負できる粒の中でも実力者と戦うことができた。

故に考えられるパターンのほぼ全てを知っている、とも思っていた。






フラン氏は私にかつてこう言った。
「高校同期のローターさんはほんと強いよ。駆け引きが上手い。常に何をしてくるのかわからない。受けも強いが攻めて点数を取るタイプ。くるくる反転をし続け、どちらでも強打が出来る。」

・・・ローターさんねぇ
フラン氏得意の妄言か。誇張上手だからなぁ、、、相手を強く見せすぎるあまり弱いところを無視しているいつものやつじゃないの?

だが実績を聞けばローターさん、かなりエグイ。
卓球王国である愛知から全中出場、杜若の推薦を蹴った、遊学館に舐めプでフルゲーム、森本耕平と激競り。

ただ守っててそんな結果になるわけが無い。守備専のペン粒では打てる相手にはサンドバック。
上級レベルと勝負できるということは、間違いなく攻めて点数を取ることができる。

事前情報としてローターさんは反転強打が強いと知っていた私は、来る愛知遠征に備えて、対ナックルのバッククロスぶち抜き、バックストレートにシュートドライブ、打点を落としてフォアストレートぶち抜きを仕上げた状態で愛知入り。

愛知名物味噌カツを矢場とんでたいらげ、常に台が常備してあり、それも一度お金を払えば一日中打ち続けることができるらしい県スポと呼ばれる体育館に。

フラン氏の触れ込み通りであり、いろんな年代の卓球人がそこで汗を流していた。
愛知羨ましいな、、そんなことを思っているうちに、およそ6年の間架空の存在としているかどうかも信じきれなかった幻の最強粒高であるローターさんが姿を現す。

私のブログの読者だと教えてくれ、テンションが上がった私。
ローターさんにローターさせることなく、ドヤ顔で最近の考察を交えてフォアを教え始める。
生で聞いた方がわかりやすいと感想も貰い、またもデジャブ。やっぱり言葉だと限界ありますよね、、、

ハイテンションのまま1時間位講義し続けたあたりだろうか、

「粒見てないや。俺何してんだろ。」

と冷静になってしまった私。でもいいかと続けていると、フォア強打のフォームが変化しより回転のかかり安定感のあるドライブに変化していく。

「これドライブ?」

いつか誰かに言われたことがあるような聞き覚えのある質問が飛んできたが
「走ってるしかかってるしこれはドライブでしょう」
と適当に受け答えしているうちに、ローターさんがおもむろに
「あ、わかった。」
と反転して粒で強打し始める。
驚くべきことに上系のボールが、裏ソフトラバーよりも早く安定して入っていた。
「粒と一緒だ。」
そりゃ一緒だよ、それが3Hitなんだものと思いながらも、なんで粒で入るんだと疑問を捨てきることが出来なかった。
「じゃあ反転して裏でやろう」と言ってみるが、どうも裏だと入らない。
一体なんでだ、、、と謎でしかないが、どうも話を聞いていると



「いつもの裏の設定と違う」



といった趣旨のことを話していた。
いつもの設定といっても、粒で様々な打点で打って入っているのだから裏で打点をいじれないわけが無いんじゃないか。そんな疑問を拭えないまま、オールをした。

(ちなみにその時フラン氏は近くにいた東京選手権や全日本マスターズに出ている70代のおばあちゃんに捕まっていた。私も面白そうでゲームしてきたのだが、その時のお話はまた今度。)


1球目、バックに長い下系サービス。直後、フォア前に落とされ2バウンド。
それも全く反応できずノータッチエース。私は言葉を失った。
そして刹那に気付く、「ぶん殴らないと点数が取れない。」
ロングサーブに対していきなり短く返せる選手なんてそうそういないんですよ。
普通プッシュするべき場面。ここでプッシュしないというのは「その辺のペン粒とは違うぞ」ってアピール。
俗にペン粒対策と言えば長いサーブと言われるが、それは実力の無いペン粒に対して。速いプッシュしかできないペン粒なんてサンドバックでしかない。
強いペン粒にロングサーブはむしろメタ済みなことが多く、そこを軸にハメパターンを持っているもの。ハーフロングの打ちづらいプッシュや、下で切り返してきたり、ストップをしてきたりなど。フォア前に2バウンドはまず間違いなくハメパターンの1つ。
それ故に低くコントロールできるサーブを軸に、相手にプッシュを催促してミドルorストレートのカウンターの択で立ち位置を真ん中に張り付けたい。
それからならロングサーブ全般をバックサイド寄りに出しておけば、前に振る動作が入りやすくなり、レシーブ時にハーフロング以上のボールしか来なくなるはず。

そんなことを考えながらオールを続けると、読み通りに。アップダウンを混ぜて先に私からかけて無理矢理バック対バックの局面に持ち込むことが出来ればぶち抜きができる分私の方が分がいいよう。
だが、あくまでいいよう、なのだ。
ローターさんのサーブがただの下で工夫が無く、切れているが若干浮いているからこっちから展開しやすくアドが取れているだけ。もし仮にサーブで難しいものを出されていたら私が劣勢なのは間違いないだろう。

優位なのにあまり優位で無い気がする。どことなくミスをしそうな雰囲気がある。

この妙な違和感。
下ナックル性のボールが多いのに、なぜか卓球が早まる。下ナックル使いのペン粒にしてはラリースピードが速い。

・・・そう、ローターさんの打点が早すぎるのだ。
それも常に早いというわけではなく、メリハリを付けられて早く感じる。ただ、早い時は極端に早い。
早く入りすぎてのミスもあれば、ビタ止まりすることもある。もとより深いボールや、速くて回転量のあるボールは捨ててるような。
確かにそういった考え方の方が合理的だろうが、私にはそれは甘い。だって早いボールの方が好きだし、一番苦手なループをしなくていい展開なんてこれ以上ないくらい甘く感じる。無論違和感は残る。だが下ナックル性である以上、「ミスを誘発される気分」になることがあっても、そこまで誘発されるわけではない。

そんなことを思いながらフォアミドル~フォアの出し入れをしてどんな技を持っているのか様子見をした。
すると粒での強打、粒プッシュ、反転しての角度打ち等なんでもござれ。

チャンスボールをあげてしまうと、張ってカウンターしない限りは対処することができない決定打のバリエーションがあった。

そして、あまりに早すぎて待てない。
どの技術も打点が早すぎるのだ。

ここで私は先の違和感を思い出した。


「いつもの裏の設定と違う」


ローターさんの言ういつもの裏の設定とは、裏の打点が「相当に早い1点しか持っていない」という設定だった。言い換えれば裏の強打と粒の強打の打点が同じだった。

よくよく見ると下から上の運動のみで、体の前で強打しているように見える。
テニプリでいうバイキングホーンのような。。


それは、かつての平岡式のAA+肩関節屈曲運動のエッセンスが多分に使われていたフォーム。
打点を台中で設定し、スイング軌道の中でも後ろから前のベクトルが弱いところでインパクトするようにしている為に入るフォームではある。しかし、見慣れなければいびつで不格好。

フラン氏も「あまり運動神経はよくない方。少ないカードしかないが、豊富な戦術でカードゲームを仕掛けるタイプ。技術量で詰ませるよりかは、戦略的に勝つ選手」と評価するのも納得だった。
技術の使用条件を広げるのではなく、点として使える技術を極め、それが使える条件を整えるような戦い方。かっこいいじゃないか

要は見た目は悪いが、粒と同じ打点で安定して入れることができるフォームを探求した結果、それに行きついたらしい。

チャンスボールを毎度粒で打つのは、相手からしたら予想外のボールが出るものの、面が少しでもずれたらミスをする可能性がグッと上がるハイリスクな技術。
「チャンスボールが来ると読めている状況下でより安定して点数を取る為に反転して強打する」
ことを目的としたフォームはロジカルに物事を考えられる人間でなければ思いつかない発想だろう。
打点を広げることや、より強いボールを求めるのではない。あくまで想定局面で一発が必ず入ることを目的としたまさに必殺の一撃としての強打のフォーム。

こいつはかなり面白い。ローターさんすげえや。



現代卓球を考察し、シェーク裏裏をとことん突き詰めても、彼のような卓球に行きつくことはまずないだろう。
「粒と裏で打点を同じにしたまま、早い打点の利で点数を取る」と明確な目標を持って卓球を作り上げてきたからこそのフォーム-勝手に入るフォーム、勝手に入る条件を仕込みより速い卓球をした方がかつ高速(脳筋)卓球が推奨される現代卓球の流れとは対極といっていい。


現代卓球信仰の私がペン粒に反転ドライブを教えるなら打点を2つ持てと教えるだろう。
だがそれに対しNOを突きつけ、打点を1つだけ持つことのメリットを実際手合せし教えられた。
打点が早い卓球で、何でも成り立たせようとするため「すごいな」と声をかけ、対粒でオールする前に打点を体の近くに設定する方法を教えてみたりしたのだが彼にはそれは不要のよう。
勉強になったよ、現代に抗う卓球は超戦術的だったんだね、これはブログ行きだ
そんな思いで「いらん時間を使ってごめんね」と謝ろうとしたのだが、

「いや、打点を遅くした方が安定するから遅くしたいんだ」

とすっとんきょうな返答。ここまで考え抜かれてるのに、、、、そりゃまあ確かに私も遅くした方がいいと思うのだけれど、今の卓球が成立するならいいのでは、、と思いながらオールを続けていくと欠点が徐々に見つかる。

フォア奥の低い軌道のボールに対しての処理がどうもおぼつかない。フォア奥への回り込みフォアドライブ、バックストレートバックドライブの双方が刺さりすぎる。
理由としては打法設定がそもそもフォア奥を切っていることや、クロス待ちをしているためストレートに来たら元から諦めていることが挙げられる。
確かにペン粒ならそういったボールを打たれれば負け確だし、そうしたボールが来ないような配球で優位を取るべきだから、ケアすることでバックがおざなりになるよりかは切った方が質の高いプレーが出来る。
加えてフォア奥をケアするとなると、打点を早める現在の打法ではなかなか難儀で、打点を遅くし体に寄せてあげないとネットを越えづらい。

彼が「いや、打点を遅くした方が安定するから遅くしたいんだ」と言った意味としては、プラボールでやたらストレートが狙われることが増えたからだろうか。

プラボール環境の粒となれば回転量は著しく落ち、変化もセル時代程ではない。
それに高速卓球全盛の中でコースが読みづらいフォームで両サイドにスピードボールが飛んでくるともなれば、ボールを認識する時間を長くしてより待つ時間も欲しくなる。

どうやら彼が見ていたのはペン粒が高速卓球の中で戦うための新たなスタイルだったのかもしれない。
ペン粒の変化で作ったチャンスボールを裏で確実に仕留めるスタイルと、打点設定をより台の外に置きペン粒というよりかは表のような、変化に頼らない自ら打っていくことで打開していくスタイルの両刀。

言ってしまえば打点を二つ持つ、だがスタイルとしては前陣粒高と中陣粒高くらいの違いはあるだろう。
成立すればこれまた固有のスタイルと言っていい、粒の概念をぶち壊す新たな卓球が生まれるのではないだろうか。


今回は世にも奇妙な粒と裏の打点共有タイプペン粒プレイヤーであるローターさんを紹介した。
ペン粒として新境地を開拓し続ける彼は生で見なければ魅力がわからないだろう。流石に自分で書いた文章を読んでいてもあのスタイルが浮かばない。
フラン氏のような誇張表現をたくさん交えでもしないと浮かび上がらないし、そもそも誇張表現が誇張でないことも実際に見ないと分からないだろう。

いくら頑張ってもローターさんの卓球の面白さは言葉足らずで伝えられない。

しかして、彼の卓球から見えたペン粒のプラボール向けのシステムは言葉で表現できるだろう。
近々インスパイアネタでも書こうと思う。

PS.
きっとフラン氏がこの記事を元にからローターさん解説をこれでもかとしてくれると思うので、そちらに期待したい。