前記事: 山形大学本部にて指導と研究をしての気付き「外転の程度の定義とプラボールにおけるドライブの変遷」①

の続きから。

本部の学生と練習した際のこと。
一回位見たことがあるのかもしれないが一切記憶にない子で初対面。
基礎打ちにしろドライブにしろバック系技術にしろ、一通りこなせて安定感があり威力も高い。
普通にゲームしたら負けそうだなぁ、この子結構強くないか?と見ていると、どうもバックドライブでオーバーミスが多い傾向がある。
加えて居合抜き系の打法の要素もみえ、振りも大きく打点も前。こんなに打てるのにこの打法だと伸び悩みがすぐくるなぁと思い、お節介ながら外転系の現代卓球によせてみようと色々教えてみた

教えたのは

・フォアバック共に外転を意識して高めにラケットを設定。
・インパクトは必ずスイング後半部。
・ラケットの高さを合わせてからスイング開始
・フォアは外転+水平屈曲を意識(横殴りのイメージ)(俗にいう水平打法)
・バックは外旋しつつも水平伸展を意識(これまた横殴りのイメージ)

これまで教えただけで(といっても解剖学を教えてから、全ての動作の意味を教えたりもしたが)30分くらいで別人のようなボールの鋭さが出るようになった。
最初よりも安定感はあるが、それでもまだ足りない。

よくよく見ていると、フォアバック両方とも前に振る傾向が見られた。打点が前で、それに合わせて前に振っている。
バックでは肘の位置を前に出そうとしているため、後ろから前に振ろうとしてしまうよう。そこでバックを振る際に
「尺屈位→自然肢位と自然肢位→橈屈位のどちらでインパクトしている?」
と聞くと、自然肢位→橈屈位っぽいことをいう。

尺屈→自然肢位までの橈屈中にインパクトするように、加えて橈屈の際背屈を入れるならば橈屈をより意識してするように、とアドバイス。これだけで打点が体によるかも、と思った。
すると前よりはよくなったものの、振り遅れることが増えてきた。
振り遅れる原因を見る為にフォアとバックを見てみれば、やはりフォアもバックもボールに当てにいっているような印象を受けた。
そこで
「フォア打ちの時前に当てにいっているのわかる?」
と尋ねると
「え、ほんとですか?」
大体こう答える人は、当てにいっていると相場が決まっている。症候学ですね。
「全く当てに行かないで、振らないようにフォア打ちして」
とアドバイスしつつ、私が2種類のフォア打ち(一般的な日本式の基礎打ちと、3Hit的な基礎打ち)を実演し違いを説明した。それを聞いた上で基礎打ちに戻ってみてみると、やはり日本式の前に振る方法なため、打球点がより身体の前になってしまっていた。

ここで3Hitを解説…と思ったが、文系と聞いたため寄せてただ当てるだけで基礎打ちができることを説明。あくまで「前に振らなくても飛ぶこと」「卓球の真のゲーム性は如何に前に振らないか」だということを、様々な技術を通じて理解してもらうよう努めた。
また、この際下半分(スイング後半部)に当てること、外転をしたまま当てることを意識させた。
ここまで来ると20cm以内の小さいスイングで飛ばせるようになってきており、打点がより体の近くに持ってこれるように。
バックでも同様の手順で体の近くに打点を持ってこれるように意識させた。どうやら肘を前に出す肩関節屈曲運動をやめさせ、外転をすることを強く意識させたことが功を奏してか、「以前よりも持つ感覚がある」と本人に言わしめることができた。

「全く当てに行かないで、振らないようにフォア打ちして」
と言った時点で、「前にだれだれに言われたことがある!」と言われたのだが、それもあくまで他の指導法と同列のものと捉えられていたよう。
そこから3Hitのような原理まで説明してあげないと、他の技術に繋がる大事なものだと理解させることは難しいようだった。

「外転してのツッツキって張本くんみたいだ」
といったニュアンスの感想も受けた、そうです、張本くんのツッツキはそうなんですよ、と。


一通り技術をこなした後、ドライブ性のバックプッシュや、ややドライブ性のフォアスマッシュを教えた。

ここらでフォアドライブも早くて回転がかかるやつに変えられそうだな、と思いスマッシュ時よりも外転を抑えた状態からスイングを早めにより水平屈曲を意識して引っ張るようにと強打させたところ、回転が強くかかったぶち抜きが入るように。

ここからが本題なのだが、このぶち抜きが入った際に
「これって回転かかってますか?ドライブっぽくないんですけど・・・」
「バックプッシュもこれナックルじゃないのにいいんですか?」
と質問が。

前者に関しては、説明しだすと難しそうだから適当にごまかして「かかるよ。だって張本くんのマネだから」と、強引に言いくるめた。だが実演すると説得力があるよう。
私が現代卓球風のフォームとして、セル時代の水谷のフォームと今の水谷のフォームを真似してみたり、大島風、みうちゃん風、張本くん風と様々やっていくとどれをやってもボールが早く、回転がかかっていることを実際にブロックしてみて感じさせることが出来た。ドライブの原因に必ずしも下から上のスイングを大きく入れる必要が無いことを理解させた。

だが、この現象に無理矢理説明をつけるなら、外転状態でラケット下半分に当て、外転をスイングに入れることで引き攣れが生まれ回転がかかりやすい。この際後ろから前の単純な運動が少なく、十分に引き付け3Hitを満たしてから横に引っ張っているため、より引き攣れが生まれやすいようになっている。(説明になっていないな。)

現代のフォームは、昔のようにボールよりも大幅に下から振ることは無くなってきている。(平岡式のAA打法も、アップデートされたものでなければ今や使いづらくなってしまったし)


バックプッシュも早ければ早いほど強いわけで、よっぽど意図的にナックル性にしない限りはナックルでなくてよいだろう、と一言。



今回指導して得た経験から学んだのは、外転の重要性のアプローチをどこからするかで理解度が大きく異なる可能性があること。

およそ30分位で対上バックドライブ→対下バックドライブ→フォア基礎打ち→バック基礎打ち→ストップ→ツッツキ→バックドライブ→フォアドライブ→フォアスマッシュ→フォアドライブ、の順でめまぐるしく技術を変えながら、どの運動がどう作用するのか、打点をどう設定すべきなのか、どこまでボールを寄せるべきなのかをいったりきたりしながら、レクチャーしていった。
こうして総合的に教えるのは、そもそも教わる以前から上手いから教えることができたのかもしれないが、様々な技術で有用性を理解させることで、わかりやすさを担保できたように思える。


ただ外転が大事だと、フォア打ちばかりしているよりも、いろんな技術で実感を持って使えると認識させた方が、より外転を意識的に使わせることができるようだ。


また、先入観に支配されてなかったのが一番教えやすかった理由の1つだろう。
「ドライブはかけるもの」
「プッシュはナックル」
といったイメージをすぐに忘れることができたから、外転を利用したぶち抜きを理解することができたのだろう。


平岡氏の名言である「ラバーにボールが引っかかって回転がかかる」とした一言が出てこなくてなぜ回転がかかるのか説明することが出来なかったが、それでもかけようとしなくてもかかることがあると納得されたのは大きい。
実験して目の前で実演されることは、細かく説明される以上に説得力がある。

できる人に教えたというのもあるが、生講義の方が教えやすいし理解させるのも簡単だった。

やはりブログの限界はあるんだな、生講義の方が私得意なんだな、と気付かされた一日でした。