昨日4時~9時くらいまで山大卓球部の本部(医学部の部活でなく、文系学部とか理学部とかの全学と呼ばれる方のキャンパスの部活)に顔を出し、知り合いの三段選手、初段持ちの公立校の顧問の先生、全学の学生と練習、というより研究をメインにした。

それぞれで感じたこと、考えたことが異なり、5時間もぶっ通しで考察し続けた為、ネタが大量にできた。
3人と接し感じ、考えたことをまとめていく。(本記事では有段者2人と打った時のこと。後日学生に教えて感じたことをまとめる。)


①知り合いの三段選手
言わずもがな技術も知識も豊富。しばらく打っていないうちに卓球も進化していた。
ブログ休止中に考察を進め、解剖学的に正しいと考える見解を述べると「ザイミンコーチが言ってた!」、「ザンコーチの弟子に教わった!」、「チャイナのだれだれが言ってた!」という風に昔から優秀なコーチが言っていたとされる内容と同一だと評価された。
だが、内容は同じであっても、その表現が曖昧で最も大事な内容が伝わり切れていないアドバイスを受けていたようだった。
加えて他の要素も数多くあるため、ぼやけてしまっている印象さえ。
といっても最も重要である要素がぼやけたところで、そのアドバイスを守ってさえいれば、重要な要素を踏襲できるために完璧に理解できてなくても上達することは簡単に出来る。全国レベルに手が届く選手もいるのだろうが、弊害として無駄な動きを持ってしまい、その存在に気付くことができず、それがそのまま上達の上限値として存在してしまうのかもしれない。
「より具体的な解剖学的考察の方がいいみたい。」、と確認し合った。

またゲームした際に、卓球が大きく変化しプラボールよりになり、下手に打てるボールを打たず低く相手に強打されないような技術を多用された。カウンターも俗に言うフラット系が多く、ループドライブをするにしてもバウンド後高く跳ね無いような球質に修正されていた。

プラボールが全体的に硬質かつ、回転をかけようとループしてもかかりづらくなっている傾向から、フラット系打法が見直されるようになっているのは誰もが知るところだが、一般レベルにおいてもこうした流れが顕著でバックドライブができるようなやや低めのツッツキに対しても打たずに低く出づらくツッツキをした方がアドを取りやすいのだと言う。
セル時代はバックでかけて相手を守勢させていた場面で、現環境でかけてしまえば平気でスマッシュ系のカウンターが飛んでくるそうな。確かに私もプラ対応できていない頃の彼ならば打ってくるだろうところでカウンターする体勢で待っていると、それをフォア前~フォアサイドに低く返球され肩透かしを食らった。
質の低いループをしたら打たれるから、先に相手に質の低いループを打たせる為に択を後ろにズラしていくという戦術は、まさにプラボールならではのもののように思える。
だがそうして返されたボールはフォアストレートをすれば確定一発になるリスクも伴う。
ストレートに打てれば点数が取れる、と思い4本以上打ちミスしてしまったが、プロの試合を見ていればしなければいけない場面、定跡とされる場面。
ゲームの際はTSPの試合球で、ほぼ初めてのまともなチャイナ製の試合球なため、弾みが荒れるわ、ボールが遅いわで全く対応できていなかった為ミスをしたと思い込みたいが、もうちょっと外転を意識していれば入ったか。
正直練習だと全く取れないボールが多かったが、試合なら普通に勝てるなと試合半ばに思っていたが、チャイナ製のプラボールのレシーブが想像以上に難しく上回転を持ち上げるのが難しい。
上を持ち上げるのが難しいなんてプラでは初めて。それだけ低いサーブが出されていた。

とまあしっかり卓球して、様々なコーチや選手の言葉を聞いて勉強になりました。




②段持ちの公立校の顧問の先生
たくさん質問をして頂き、それに答えを挙げその理由をお互いにアイディアをだしながら論理的に考えていく形で議論を進めたが、同じレベルで議論できたのがあまりに久しぶりで幸せでならなかった。
質問の多くが「現象の理解をどうするか」をテーマにしたものが多かった。

「バックドライブで回外→回内運動をしているように見えるがどうか」

という問いに関しては、

「そもそもこの打法を選択する選手はセンス系であまり考えていない選手に多く、プロ選手にも数多くいる。実際はそれだと打点が乏しく難易度が高い。無論できているプロ選手や上級者は多いが、あくまで不安定なものであり、そういったレベルでもミスが多い。回内運動ドライブを使っていないプロの方が世界トップクラスに食い込んでいる。あくまで上手い人がそうしているように見えて、実際に入っているから答えなのではない。」
と前置きした上で、
「実際は回内運動をしていないはずだ」
と答えた。
「なぜ回内運動をしているように見えるのか」
と続けて質問されたが、
「スイングの始点と終点だけを見ているからそう見える可能性が高い」
と答えた。
仮に、回外固定し、橈屈+背屈に外旋を加えたスイングのバックドライブの場合も、スイングの始点と終点を見れば同じく回内運動をしているように見える。だが実際スイングの途中とインパクトの直前直後をスローで見れば、橈屈+背屈で外旋をしている選手が多く、本質は回内ではないと考える。こう説明すると納得された。

こうした運動の始点終点だけを見て原因結果を考察するのは、多彩な見方が出来るため本質から外れてしまうことが多い。
だから絶対にぶれることが無いよう、「誰もが必ず満たすその人にとっての3Hit条件」に足している運動を抽出することが重要である。インパクトの直前直後を細かく見ることで打球に必要な運動を見つけやすい。

「肩関節外転運動はほぼ全ての運動に有用だ」と、基礎打ちからフォアドライブ、カウンター、カットまで意識してみるよう提言、球質が一回りも二回りも良くなり好評して頂いた。

そこで「外転をする際にどれくらい外転をした方が良いのか。何cmか。」という質問を頂いた。
正直それは感覚的に理解していたのもあっておぼろげな答えしか出せず、「5cmくらい?」と適当にしか言えなかった。故に本記事で具体的に考えてみる。

以前の記事でフォアの打球点は「スタンスを肩幅よりもやや広めにとった際、右利きなら右足のやや外側(10cm程度か、体格に依るが)かつ右足のやや前」だと考察した。
この時、肘を90度程度に屈曲or手をおへそにあてた状態から外旋して上記の打球点を通るようにする。
この時脇がピンポン玉1個入るか位開いている。
ミスなく無難につづけ、どのフォームにも発展させやすい外転具合はこの条件で合ってるだろうが、張本くんやみまちゃん、みうちゃんなど若年世代のラケット位置を踏襲できていない。彼らはもっと外転を入れてラケット位置を高くし、下側でインパクトするようにしている。

ここで彼らと同じ程度外転できるように、俗にいう「脇を拳一つ分開ける」理論を挙げる。多分これは経験的に正しいものだというのは誰もが感じるところだろう。

よく脇を1つ分開けろと言われると外転で開けるというよりかは、屈曲運動で開け、ラケット位置を前に出しがちである。そのせいで打点をより体の前に設定してしまうケースが多い。セル時代であるならばそれで十分だが、プラボール環境ではミスの温床となりうる。
打点をより体の近くで、前に押さずにスピードボールを出せるように、「外転」の目安として「脇を拳一つ分開ける」ようにしたい
といっても無論体のスケールによっては、脇を拳一つ分開けることが正しくない場合があるだろうが、私が見たところ最低限脇を拳一つ分開けるよう外転をしている選手がいいボールを打っているよう見える。
ある程度バイアスがかかっているが、馬龍、張本くん、みうちゃん、みまちゃんがそうであるため、現代卓球のフォームを定義するという意味では正解の一つと考える。
この理由を誰もがわかる形で論じるのは、整形外科医にでもならないと無理そう感がありますね。


他に何を議論したかやりすぎて忘れてしまったが、前に振らずに適切な打球点で小さく振る基礎打ちからドライブ技術へと育て、下から上のスイングをしながらも、下からラケットを入れないように外転をすることで強打できる条件を整えたのがメインか。
理科の先生なだけあって3Hitを理解されていた為、説明は簡略できた。
結局3Hitが大事、簡単に言えば前に振らずして飛ばす方法と原理を理解しているかどうかはどの技術を習得する上でも重要だと再確認させられた。

全ての技術に3Hitは隠れている、と常日頃言っているが、プラ環境の整備が進むに連れてもはや隠れることなく表に出てきている。

現代卓球の打法の核に3Hitはいる。

いい加減3Hitの大幅アップデートをする時が来たのだな、と思わされた一日だった。



PS.
翌日、こんな質問を頂いた。
「外転をすると拳上運動が入るように思います。」と。
肩関節拳上運動と言えば、私が熱心に考察する肩甲骨-上腕の関節運動ではなく肩鎖関節や胸鎖関節の運動(っぽい)。
拳上運動って要はジャミラ(ウルトラマンの気持ち悪いあれです。)になるわけで、そんな窮屈な運動が必ずしも必要なわけが無い。
質問の通り、意図的というよりかは二次的な運動だろうと調べて見るとこんな記事が
胸鎖関節のバイオメカニクス
確かに外転をすれば拳上が起こるようです。

この拳上を意識するとなると鎖骨に意識がいくわけですが、鎖骨と言えば古武術とか祐コーチが推すポイント。
大方「鎖骨を意識して、動くように」みたいなアプローチから、鎖骨の拳上運動が起きるように促し、その拳上運動の際に外転運動が入っていることが多いようです。
というのも「肩を挙げて下さい」と言われた際に、一切外転せず挙げる人の方が少ないですよね。少なからず多少は外転が入ります。


「鎖骨を意識」から強いボールが出るまで鎖骨の意識の仕方を教えるのが彼らは上手い。
原因「鎖骨を意識」→結果「強いボール」
とした因果関係である為、強いボールが出るまで鎖骨を意識させる。
意識として外転が介在していない為当ブログの方針的には因果関係が飛んでいて好ましくはないが、指導力があるのなら十分に強い教え方であると思う。

ただ私は鎖骨を意識っていうと、「そもそも外れやすくて折れやすい骨なのにそんなん使うってどういう理屈で?大きな関節を理解した方がいいのでは?故に肩甲骨-上腕骨の方が肩鎖関節より良い、よって平岡氏最強」と昔から思っていたし、説明されたらまずこう尋ねるだろう。

さて、なぜ因果関係が飛んでいる印象を受けるのか、その理由を調べて見ると、鎖骨を意識することで得られる結果として拳上運動があり、その拳上運動が生まれる原因として外転が裏にあるようです。

故に順序としては
鎖骨意識という指導法
鎖骨を意識→拳上運動→より外転が入るような拳上運動とする→外転が入るようにしたため外転が入る→強打がいく

外転を意識する私の指導法
外転する→強打がいく

という風に前者の方が回りくどいんですね。
といっても外転が必要という私の論旨に合わせての考察であり、外転中の鎖骨の運動は全く調べてさえいませんから、鎖骨が最も重要なのかもしれません。

故に
外転する→鎖骨が運動するような外転をする→鎖骨が運動する→強打がいく
が本当の答えなのかもしれません。


ただ私の指導の場合、「強打がいかないなぁ、もうちょっと外転」みたいなアドバイスはせず、フォア強打なら、
・3Hit
・外転
・下半分に当てる(CC理論)
の3つから運動に縛りを入れていくため、結果から鎖骨が動いているような動作に作り変えることはしていません。
まずは原因を完璧に抑えてさえいれば、誰でも簡単にぶち抜きが入ると考えています。
またこの3つは全て運動かと言われるとそうでもありません。
3Hitは感覚、CC理論は物理、外転は運動とそれぞれ違ったジャンルです。加えてそれぞれが考察しきったものであり、知識としては完成していて、かつどれも他の要素を含みづらいものであります。
それ故に喧嘩しづらく、それぞれがシナジーを持てる形で削り取ったものなので誰にでも教えやすいのかもしれません。

まとめるなら、
卓球においては単なる拳上運動をしていいボールが打てる道理はありませんし、実際鎖骨を意識して教えている指導者もジャミラにはなっていません。
「鎖骨を意識する」ことの意味は、外転をした結果拳上運動ができるような鎖骨の意識であることが多いような印象を受けるため、外転をすることが本来の目的で、それが「鎖骨を意識」に内包されていると考える方が自然ではないでしょうか。

これもまた認識と理解の問題で、「現象のどこを捉えるか」「原因結果をどこまで見つけることができるか」というものでした。
しっかり考えてくれる聞き手がいるだけで研究は一気に進みますね。
医学部の連中、頭固すぎるぞほんと。

こりゃフラン氏と研究をするのが楽しみでなりませんな。
明日から二日間、愛知で卓球してきます!
その後何日間かしばらく静岡、東京、神奈川辺りをぶらぶらしますが、ブログの予約投稿は大量にしてあるので1日1記事はあげるつもりです