短いツッツキを送ってからの展開を研究していて思うのだが、自分が打てるボールが来た時、やれることとして技術の種類の何があるかの幅があることよりも、明確に違う球質のボールをいくつ出せるか、もしくは相手が知らず知らずミスをするような球質差が出せるか否かの方が重要と考えるようになった。


具体的には、短いが少し浮いたボールに対し、
・ある人はチキータ、プッシュ、バックドライブ、回り込みフォアドライブ全てが出来るがボールのスピードはそんなに出ないしキツイコースを狙えない。
・ある人は出来る技術はツッツキと回り込みフォアドライブだけだが、球速差を付けることができ、尚且つコースを突ける。

この2人を比較した際、実際に得点を重ねることができるのは後者である。

これを顕著に示したのがアルナ対フレイタス戦



勿論、フレイタスのボールは早いしコースも突いているが、このレベルにおいてはボールが遅く、コースもつけていない。

いくら様々な技術をもってしても攻撃を完遂する為のストーリーを描けない始点では、効果的には成りえないのだ。
先手を取ろうにもボールが甘くて先手を取れない時点で、フレイタスの工夫はアルナ視点からすれば全て同じようなことをしているように映るだろう。
技術的水準が、相手からして脅威になりえない技術はいくら種類があっても、相手にとって嫌な分岐とはならない。

この試合を見る限り、アルナが打ち始めたらフレイタスは打開する術が無い。
先に緩くかけさせたボールをカウンターしにいくか、バックに送って回り込みを催促してから展開しなければラリーを作れない。
だが、甘く出たり浮いたりしたらそれまたアルナのターンとなるし、繋ぎのツッツキやストップは安易に送ることはできない。
強打はすることができないが、処理可能な下系のボールに対しては、アルナはフォア前に一旦低く短く返し、それをフレイタスが強打できないため質の高い繋ぎを要求される。
それに対し甘く出たり浮いたりしたら~とまた展開がループする。

試合を通じて、アルナの繋ぎが抜群にうまく、バックが弱点であるものの回り込みと絶妙なツッツキの択でフレイタスに厳しい展開を強いていた。

安直にフォアに打てば潰される
バックが苦手だからと安直に送ればよりひどく潰される

このがんじがらめの二択は厳しい。




一方ファンツェンドンはどうやって攻略したか。
アルナの強みを露骨なコース取りの択を押し付けて消しにいった。

本試合で特徴的なコース取りとして挙げられるのは、チキータでのバックストレートと、回り込みフォアハンドでのアルナのフォアミドル狙い。

アルナのフォアハンドの特長としては飛びついた際、下から上のスイングで外から殴って飛ばしたボールが強い。
一方で、外からいけなかった場合はボールは浮くわけでチャンスボールと成りうる。
逆モーションも入れながらバックストレートを狙うことで、反応されなかったら勝ち、反応されてもおおむね有利の状況をつくりだしていた。

またストップ展開から自ら打ちに行った際は、徹底的にバック攻め。
ずっとバックを狙っていれば回り込んでカウンターされるため、速いタイミングでフォアミドルを突く。
フォアミドルは前述の通り強くいけないし、ちょうど回り込みそうな挙動を見てからフォアミドルをねらっており、尚更効果的だった。

また、ナックル系サービスや、ナックル性のブロックも混ぜたことで面を作る技術でのミスを狙っている。

以上から
アルナ対フレイタスの場合、アルナ対ファンツェンドンの場合、どちらも択ゲーをしかけているわけだが、アルナとしては相手に択を作らせ、それに対する答えをぶつける戦術、ファンツェンドンは自分から択を作り、相手を見ながら選んでいく戦術を用いていた。


択ゲーの基本として、択を相手に選ばせた際、どの択も選ばす勝負に乗らない場合は想定通りにはまずならないし、自分から選んだ択に対して相手の対応がそもそも完璧ならば、想定通りには進まない。

自分から分岐を作ったところで無意味ならば戦術として成立しないいい例だろう。

選ばせる側となるが、選ぶ側になるか。
あなたの戦術はどっちよりだろうか。
独りよがりな戦術かどうかは、こういった視点から考えればわかりやすいだろう。




PS.最新のフレイタス対アルナ戦の動画が上がっていた。



今回フレイタスが用意した作戦は、
・先にかけさせたボールをカウンターする
・なるたけ浅く返し、自分のイメージしたボールを貰ってから展開する
大ざっぱに二つが本線。
コース取りもなるたけ散らして十分に打たせずにカウンターをしようという作戦だった。
どちらかと言えば受けの思考だが、そういうプレイスタイルだし、多分カウンターの精度も、方法も練ってきたのだろう。

だが実際はアルナの内容勝ち。
浅めのボールに対しカウンターを準備していたフレイタスは、小スイングから出されるスピードボールに対応できず。(これは水谷が不調期によくやっていたミスで、フレイタスはアルナの攻略を題材に、チャイナに届くよう、より自分を強くする方法を模索しているのかもしれない。)
また、ネットと付近の高さの出たツッツキに対してのループドライブがカーブ系と順上系の二種類をアルナは使い分けているらしく、その回転差にフレイタスは択を押し付けられ悩んでいる様子。

回り込みでそこまで早くないループをストレートに打たれた際の反応が明らかに嫌がってるものだった。

アルナvsフレイタス、やる度に作戦が変わるし、ペンドラ的発想の策士と天才的ボールタッチを持つエリートという構図。
今後も目が離せない。