前記事:「一歩先を考える②;ツッツキを逆張りして正当化する」


微細なタッチを学ぶためには、そもそも絶対に飛ばない条件を知らねばならない。


 ツッツキを飛ばさない方法は上下方向、前後左右のベクトルの衝突を避けることだが、流れの中で相手に打たれないようにボールコントロールするとなると、柔らかいタッチを常に出す必要性がある。

ボールタッチ、感覚と呼ばれる代物だろうが、センスとひとくくりにせず、全て自力で再現することは不可能では無いと考えている。
つまりは、ボールの放物線のどの位置にいる時にどんなもん触れば飛ばないか、また、自分のグリップの深さ・浅さ、強弱、ラケットワーク、ラケットの当てる位置に至るまで詳細な場合分けをし、打つ前にボールの軌道をイメージしきることが出来れば、天才の無意識が凡才の意識下で行われうるということ。


だが、それらを事細かに教えると言うのもなかなか難しいし、私自身できるものでもない。せいぜい大ざっぱな場合分けをし、それに準ずる程度。
調節する際のイメージとして3、4の抽象的概念を持たせ、「こんなイメージのボールが来た際にこんなイメージの感覚をすればおおむね低くいく。ぶっ飛ぶことはあんまりない」位の「何か」を覚えさせ、そこから当人の想像力に委ねるくらいはできるのではないか。


そのイメージをいくらか持たせようにも、私はそこまで持っていない。
だが、まず間違いなく正しいと言えるイメージを1つ持たせようと考えた。



そもそも論として垂直方向、前後方向の力を過度に加えればボールの放物線は必ず大きくなる為、ボールは高くなることを教えようとして、ベタに台の半分だけを使って小さいラリーをさせてみた。

すると面白いようにボールを吹っ飛ばす。

「ツッツキする際はラケットよりもボールが高くなったらダメ。必ず打球後にラケットの位置と同じ~低いボールが行くように調節する。その為にボールとラケットの高さを合わせて、ラケットの下半分でインパクトするように。この時振らなければ勝手にボールは低くなる。」

とりあえずこれだけ教えて数十分放置してみた。

すると平気で低いツッツキを安定して入れることができるようになった卓球を始めて一年の子が出てくる。
オールコートと比較すれば、台を小さくしたことで前に張りつけるようになり、振る力もセーブする感覚が簡単に習得できたよう。

それからオールコートに移行してツッツキをさせてみるのだが、その際
「台を半分にしてやっていたことを台上でやること。下がらずに目の前で同じようなボールタッチでやれば自然と低くなる。ボールはコート半分より後ろに出たらダメ。」
と条件を加えてみる。
すると台を半分にして練習していた時と同じような感覚でできていた。

なかなかツッツキを教えるのは簡単らしい。

だが、これはあくまでワンコースでの話。実際に動きのある中でツッツキをしてみると、どうも変なオーバーミスなりネットミスをする。
フォーム的な問題もあるにしろ、どうも問題はそれ以外に、何か根本的な問題を抱えているような気がする。

この問題を言い換えれば、動いたら条件が崩れて力が入ってしまうということ。
色々可能性を潰していった結果、最後に行きついたのはグリップの強さ。

そこで始めたのが、グリップの観察。

前述したが、グリップの状態がどうなっているか、どれくらいの力で握っているかどうかは、打感や細かな飛びに大きく左右する。

私なんかは日常生活でスマホなりコップなりを何度も落としてしまう位、常日頃から軽く握る癖がつくほどにラケットを軽く握る習慣が付いているのもあり、ラケットに触れるがグリップのとっかかりが無かったら落ちるレベルで軽く握っている。

私よりも強く握っていたら全員矯正してみようと。
「さて、実際にいつもラケット握っているみたいに俺の手を握ってみて」
というと、誰もが「ギュっ」って握ってくる。

いや、握ってくれるのはうれしいけれど、それじゃあラケットの面固いよ、、、と。

もっと軽く、もっとギリギリに、と言ってもなかなかわかんない子には手かして、と実際に握ってあげて「え?」というリアクションを受ける。

でも、この「え?」と思われるくらいに軽く握ってる俺スゲー、という意味では無く、軽く握るの意味の幅が人それぞれに相当にあるということ。

それ故に感覚のミニマムがグリップ一つで変わってくるし、それに応じた面の出し方やタッチ、フォームまで左右されてくる。


ここでグリップの矯正を行った後に、これまでと同じ指導をしていくと、明らかにタッチが良くなってくるのが見て取れた。

更にいえば、このタッチが繊細に感じれる粘着ラバーは指導に持ってこいで、男女問わず全員にキョウヒョウ系のラバーや翔龍、アレス辺りを使わせたいもの。
それもあってか、練習でも2週間くらいしか使っていないアレスを今日だけで2枚あげてしまった。。
でもそれが正しい使い方なのかもしれない。
アレス2週間落ちなんてもっとも使いやすい頃合いだし、これで伸びてくれるならいいものか。


さて、この最小のタッチを強打にいかにして生かすのか。


ここでも繊細な、微妙に触る感覚を体感的に理解させるため、「音を意識する」ことを引き合いに出してみた。

金属音が成り合うトッププロの試合においても、高い音はなるにしても、無音に近いドライブなんてのが高頻度に使われており、当てこすりとか擦るとかそういうカテゴライズをせずとも、どちらにも共通して音が出ないように擦るドライブがベースとして存在していたりする。

この音が出ないようにドライブすることを意識させると共に、その音を出さないようにする方法として以下をあげた。

・グリップは最高に軽く
・スイング方向は後ろから前ではなく、下から上。(故にラケット、スイングの下半分でのインパクトを意識すること)
・下半身始動で肩関節を使い、必ず大胸筋と肩の付け根が張ってから肩を動かすことを意識すること(これにより、肩関節が決まった状態から始動することができ、バックスイングが毎回同じように、かつ最高に取ることができる)
・ボールスピ―ドはスイングスピ―ドで確保する。間違っても殴るとか、当てるとかそういう飛ばし方をしない。あくまで音が出ないように。

すると、どうやらボールの回転量・スピード共に増し、本人に新感覚が生まれたよう。

結局は力を入れることが強くぶつけるという意味に置換され、インパクトが強いことの意味をはき違えてしまっている場合が多いよう。
事実インパクトの意味、タッチの意味を明確に説明したり考察している卓球指導動画なんかまったくないわけだし、指導者であっても一人一人にオーダーメイドで握り方から教える人なんかいないのかもわからない。
「グリップは人それぞれ」
なんてのは指導の放棄でしかなかったのだ。上達に行き詰ったら、まず考察すべきはグリップである。
非常に「臨床的」内容ですね。



「おばば、握り方から教えてくんろ」

と映画ピンポンでペコが言ったように、握り方から教えることができるほどの指導者・おばばはホンモノなのかもしれない。

卒業が目の前に来ている今さらではあるが、グリップの本当の意味が分かったのは後輩たちのお蔭だし、これ以上なくうれしいものだね。




結語
グリップと触り方のミニマムを変えることで、強打にまで繋がる一連のタッチの向上が見られた。
その全ての始まりは、台を半分にしての基礎的なラリー。
ただあの練習を
「ボールタッチがー」とか「軽く打つ感覚を身に付ける」
なんてごもっともな理解で留めておいてはすぐに限界が来るよう。
あそこで学ぶべきは自分の脱力の限界値、そしてそれに基づく更なる技術研究指針だった。


この脱力を見直すということはどのレベルであっても必要不可欠なものであり、その選手の技術の限界を規定するのもまた脱力の程度である。



続く。