「どう教わったの?」と聞くと、出るわ出るわ謎理論、謎指導法、謎練習。


変な癖がついてしまっている経験者や、動きに独特の癖を元から持っている初心者に教える際、私はどうしようもなく苦労するのだが、あまり動きに癖は無いものの謎に包まれたことを反復練習しある程度基礎がついている経験者に教えるのは割と簡単だったりする。


というのも、謎に包まれたことで癖がつかず安定して入れることができるタイプは大抵卓球センスが良い場合が多いからだ。


ここ一か月のトレンドは基礎打ちを拡大解釈していく指導法を推しているが十分に効果が見られていて、某三段選手からも反響を頂いているし、部内で指導していても上手くなった選手もちらほら出てきている。

ただ、なかなか上手にしてあげられていないのは大学初めの初心者だ。

中高はじめなら毎日のように練習できるものだが、大学だとせいぜい週2、1回の練習で90分ほど。

繋ぐ練習をするから当て感とかは身についているが、回転をかけたり、強打を打ったりなどはなかなか身につかないよう。


そういう子にも実験的に基礎打ちの設定や、面移動の概念を教えてみるも実感が湧くわけもない。


そこで先週から取り入れてみたのがちょい足し指導法

初心者相手には色々な上級生が教えるし、教え方も様々。
私から習って上手くなった子は、私が当時教えたように教えるし、私のことを全くもって無視する後輩は、その後輩が中学当時習った方法に自分の感覚を足して教えていく。

何を習うにも全くもって知らないことを言われるよりは、一度聞いたことをベースにして教えられた方が頭に残りやすい。

これは勉強なんかでも同じで、一度頭に入れたことをおさらいし、そこから派生していった方が肉のつく学習効果が得られる。


当ブログでは散々に一般的な指導の誤りを指摘し、それの本質を考察し続けてきたわけだが、どれも「一般的な指導は言葉足らずで本質の考察が足りず、大筋だけは合っている。ただそれを説明できないバカな指導者が多いせいで、上達できない選手が多々いる。」という論旨だったのは読者さんであれば何度も見た定型句だろう。


表現の理解と考察は私の最も得意することであり、まず教える前にこう聞いてみる。

「どう教わったの?」

きっちり詳細に説明してくれる子であれば、「じゃあそれを実演してみよう」と、実際にやってもらう。


どうやらこれが刺さるらしい。


その子が受けた指導をどう解釈しているか、そしてその指導の言葉の意味をどこまで説明しているかを実演させたものを見て、私が解釈することさえできれば、肉付けするだけでより上達しやすくなる。

一見当たり前のことかと思うが、その実理解して他者の指導に乗れるよう軌道修正するのはなかなか難しい。

それ故にどんな指導者でも、その指導者が知っている感覚で物を教えてしまうため、いく先々で全く違うことを教えて貰った経験がある選手も多いことだろう。


長いスパンで見るなら、同じ人に教えを受け続けることができるなら0から教わった方がいいかもしれない。

私はもう卒業まで半年を切ったし、私がいなくなった後教える人間のことを考えた指導をそろそろ心がけていかねばならない。


たとえば
「腕を大きく回すように教わりました」

そう言われたなら、それは「前腕」じゃなくて「肩を回すように」だよ、と。
前腕だけが回るわけないでしょう、前腕は上腕と繋がっていて、上腕は肩に繋がっている。
人間の関節運動は末梢になればなるほど安定感が無く、調整も難しくなる。
大きい関節を動かすようにしよう。


これくらい説明を加えてあげるだけで、運動は円滑にできるようになっていた。
別に一から教えてあげる必要は無かった。

また「強いボールを打ちたい」との要望があったため、ラケットのどこに当てるか意識しようと。


ラケットの下半分に当てること、下半分に当てると面移動が起きなくなるため安定する。
試しに上半分に当ててみなさい、面移動が起きてブレブレでしょう。
基本的に上半分に当てて入るのはセンスがある人だけ。上半分に当てられなくて下半分に当たった場合、上半分条件化での面ではなくなってしまうから、ミートポイントが小さく、ミートが難しくなる。センスないのにやってるのは皆物理を無視したバカだけだから、君は頭がいいんだから下半分に当てましょう。
面移動が減り安定してミートできるようになったならあとはスイングスピード。
肩を回す運動にシナジーがあるのはフォロースルーを左耳の近くに寄せるような前方向に小さいスイング、一般的にいう横に引っ張るような打ち方。
また肩を開いて、体の横からラケットを出すとスイングスピードが上がる。これは腰を回すからではなくて肩が使いやすくなるから。


一般的によく言われることに情報をちょい足しして、論理性を持たせてあげるだけでやりやすくなるよう。
初心者な為、いきなり安定して強打が入るようにはならなかったが、ちょいちょい入るようにはなっていた。


このように「腕を回すように」というアドバイスを受けた初心者相手に、一つのアドバイスに理屈を足していくことは容易であった。


まとめ
教えることを簡単かつ円滑にするために、まずはその人の受けた指導法、その人の核としてある理論を理解し、そこに「ちょい足し」していく方法は有効。