私は医学生ということで、先日まで長野で卓球の東医体に出場してきた。
医学生しか出れない大会で将来のお医者さんたちが、日頃のうっぷんを晴らす為に日夜取り組んできた練習の成果を、同じくらいのレベルの中で競う、一年で一番大きな大会。
全日本選手、インハイ選手、全日本カデット出場者等強い選手もぼちぼちいる。

今回私は、相当に女子に入れ込んでおり、自分の練習は返上して指導にあたった。
二人の選手を重点的に育てた結果、女子団体ベスト4、女子シングルスベスト4、女子ダブルスベスト4と山田、柳田よろしくのトリプルフォーを達成。
もう私のお蔭だといわんがばかりに言いたいところだが、当たりに恵まれた節もあり、選手自身もすさまじく強かったため、なんというかこの大会にかける思いがどこよりも強く、それに見合うよう卓球の神様が工面してくれたんじゃないかと思えるほど。

しかして、大好きな後輩たちのこれ以上ない笑顔を見ることができて幸せだった。




さて、浮かれたネタはここまで。
今回もまた考察すべき事例が多々あった。

まず第一に挙げられるのはアドバイスルールに関する盲点である。
私達が経験した事例から。
基本的にアドバイスルールの変更に伴い「一般の試合ではラリー中以外は全てアドバイスが可能となる」ようになり、「サーブをしようと構えている時も含めて」アドバイスが可能となった。これは「ベンチの活性化」が目的となっている。
うちの子達はメンタルがそれはそれは弱い為、なんとか励まして強く頑張って欲しく、私はルールに則り、「選手に語りかけるアドバイス」を全試合、全ポイントで続けた。
「強くいけ」とか「絶対打て」とか「ここで打ったら4点入るぞ」とか適当なものまで。
少なからず状況に見合ったことさえ言えれば、実際4点入ることもあるし、「出たらかける」とか「腰を落として」なんかは言えば言うだけ効果がある。

ダブルスなんかでは呼びかけは顕著で、私の大声でのアドバイスは味方だけでなく、相手にも届く
例えば8-8で相手サーブの場面。ここでベンチから「絶対出るから強くいけ」と声をかける。
相手のメンタルが弱く、深層心理が打たれたくないならば、相手ベンチからの「絶対出るから」という声を聞けば大方サーブを短くしようとする。そうして短くしようとしたサーブがメンタルの弱さから台から出てしまう。そうしたサーブは勢いがなく非常に弱い。そこに味方側には「絶対出るから打て」というアドバイス。
相手への精神的プレッシャーに加え、味方への精神的支えとなれば、「絶対出るから打て」はもはや魔法の言葉となる。

これをセコイとかいう人がいたらまあ心理戦が下手くそな人なんだろうな~と私は思わざるを得ないし、少なからず勝負事でありメンタルスポーツと呼ばれる以上心理戦というのはつきもの。

声出しで「相手を全く罵しったり、罵倒することなく相手の心理を揺さぶり、味方を勇気づける台詞パターン」というのは、正直有りすぎて数えきれないほど。
インハイの団体戦でのベンチのアクション系煽り、監督の無言系応援、関東学生リーグでの超絶一体感なんかを研究してきた私がひとたびベンチに入れば、試合に入っているのと同義にさえなる。

私の先輩方もそうした心理戦が得意な勝負師が多く、なんなら日々麻雀で鍛えていた。(ここで麻雀なんて、、とか卑下する人がいたらまた心理戦が下手くそなんだなぁと思わざるをえないが・・・)
実際私の尊敬するドクターに麻雀が強い先生が多いし、そこから学べるものも多い。


さて、ここからが本題だが、試合後に相手選手からこんなことを言われた。

「サーブのサインを見てそれを味方に教えるのをやめて下さい」

私はハッとしたね。
その発想があったのかと

確かに言われてみればこれはアドバイスルールの盲点。
というのもサーブでトスの動作に入るまではアドバイスが可能。つまりサインを盗み見て、それを伝えることは全く違法にはならないのだ。
いや、勿論マナー違反ではあると思うが、それこそ直接「横下ロングサーブ来るよー」とは言わなくても、サインを読み切った後に「しっかりやるよ」とか「声出すよー」とか全くわからないような言葉に置き換えて味方にサーブを伝えることができる。

話を聞いていると、私が応援の際に上述したような「絶対出るから打つよ」というアドバイスが、サインを盗み見ていったと思ったらしい。
確かにそう私が言葉をかける場面の多くは8-8とかの競った時だし、実際女子であればロングサーブを出したい場面。たまたまとは言い切れないくらいの頻度で当たり、それを狙われたら負けたのは私のせいだと思いたくもなるのはしょうがないかもしれない。


正直、相当な言いがかりを付けられてもうブチギレたくなったところだが、まあ向こうがそう思ったならしょうがない。そっちがそう思ったならそうなんだろうねとしか。
別にそれが真実であっても、真実でなくても結果は変わらないし、アドバイスルールに抵触しない。強いて言うならマナー違反。まあ私としてはさらさらしていないし、ルールを確認してしまった今ではただの言いがかりに過ぎない。


ちなみにこのアドバイスルールの盲点、「ダブルスサーブのサイン盗み」に関してはあの環境では全く採用できないという落ちもついている。

お相手がアドバイスルールの盲点に気付いていたからもしれないが、それの盲点に気付いていないのが今回のミソ。

そもそも、大会に出てきた女の子の多くは、
サーブがそもそも全て出ていて、100発100中でストップがビタ止めできるような短いサーブを出せるない。
出してる本人が「短い下」と思っているサーブの多くも、なんだかんだ台から出ていることを私は知っている。

それも決勝戦でもサーブが大体台から出ていたし、私が指摘された相手のサーブも何から何まで台から出ていた。

それを知っている状況で「短いサーブ」とか「長いサーブ」とかサインが出されて果たしてそれを信用できるだろうか。
私であれば絶対信用しないし、サインを盗み見ても絶対にそれを教えない。
何せ、サイン通りにサーブが出ることが無いんだもの。台から出ないサーブのサインで台から出た際に明らかに相手にアドが来る。
なぜわざわざ選手のジャミングを・・・?


相手の実力が信用に値しない限りは、サイン盗みの意味はなさないのだ。

正直このレベルではあまりに意味を持たないサイン盗みではあるが、より高いレベルではどうだろう。
全国レベルで、みうみまのようなサーブからごり攻めしていくような卓球を相手にした時なんかは明らかに大きな意味を持つ。
アップダウンがわかれば、次の相手の理想とする展開まで読み切れる。
下手したら今後高いレベルにおいてサイン盗みが問題となってくることがあるかもしれない。

なかなか貴重な経験が出来たなと思う。


なんというかここまで読んだかたならわかるだろうが、医学部卓球の本質は「ただ卓球をするだけの考察不足の中学卓球」であったりする。
卓球を論理的に考えられる人間はいても、勝負師としての心得を持っている人は非常に少ない。
勝負勘を持った人間がベンチに入ることなんてまずほぼない。

自分で言うのもなんだが、双方を兼ね合わせる私が選手を操縦しているように見えたなら何かしらからくりがあると思ってしまうだろう。

そこからの原因探しをしての「サイン盗み」なのだろうよ。

それに私みたいに熱心に選手に刺さる言葉を投げつけてくれる、「アドバイスルールを理解した」ベンチがいないのもあいまったか。正直いいベンチに恵まれず、かわいそうでならない。

心中をお察しして、非常に浅い考察ですこと、とは本人には言えなかった。
なぜなら、まだ試合があり、私のメタの全貌を明らかに出来なかったから。

次回は最新卓球から考察した、女子卓球のメタに関して述べていく。