一瞬で上手くするにはこの上ない練習法である「システム多球練習」
徹底的に必要な展開のみに絞り、繰り返し詰込み型で練習する方法である。
前々からいいよーとはブログで言っていた(?)かもしれないが、やはりいい。
実際に試合に使える手筋をそのまま多球でするわけで、その状況さえ作り出せれば試合でも練習通りにできる。
いろんな動画や卓球王国紙面なんかでも紹介されているし、中国選手がよく多球練習で取り入れたり、祐コーチの動画でも取り入れられたりしている。
中国選手であれば球出し側が切れたストップ→練習する側がストップ→フリック→カウンターの流れで、サーブからレシーブまでの時間短縮と、変なミスを減らして前後動+カウンターをにフォーカスをあてて練習している。
上の参考動画(以前もはったことがあるだろうが)では、試合をする上で盲点になりやすい連打パターンを取り入れている。
フォアでストレートドライブを打つことそのものがハードルが高いが、それに対する返球の多くはミドル~バックよりであり、回り込んで再び強打することは練習していないと難しい。
それにオールの中でストレートドライブを決めたのちに、早いピッチで回り込みに余裕がないボールが返球される可能性はそれこそ全国レベルに行かないと出てこないだろう。
こうした自分始点の攻撃の安定性、バリエーションを手っ取り早く身に着けるためには、対戦相手の技量にかかわらず、球出し側の技量にすべてが求められる多球練習がベストといえよう。
また、対下回転に対するストレート強打は三球目でも十分にボールに触ることができるだろうが、やはり限りある練習時間で試行回数を稼ぐことは難しい。
対下は多球で行うべき、と偉い人がよくいうがまさにその通りで、球出し側が上手いならばまずは多球でやるべきだろう。
上の祐コーチのように一人球出し上級者がいれば成立する多球練習もあるが、連続で上手く出せなくとも最初の1球だけ上手く出せればあとは選手の技量や、練習設定に応じて密度が増すものもある。
それが今回のテーマである「システム多球練習」で、前述のは中国選手がよくやる1対1の多球練習に近く、それを多人数で技術分担して効率的かつ実践的な練習をする方法である。
つまりは、二人以上のプレイヤーと一人の球出しを加えて効率よく、かつ球出しスキルがなくとも効果のある練習を生み出す方法を説明していきたい。
といっても卓球王国でよく初心者を相手に中学生顧問が全国大会に導く練習法みたいなのでよくあるネタを再考察したものだが、多球練習で強打したボールをそのままスルーしたり、多球練習でツッツキとかフリックしたボールをそのまま放置するのはもったいないぞ、というお話。
それこそ男子に多球をし、ぶち抜きの安定性を図って八割くらいの安定性で入るならば、それに対して初心者なり、ボールスピードに慣れていない女子にブロックをさせたほうがいいだろうと。
現在男子指導に飽き足らず、女子全般にも教え始めたが、私なりにある程度のコンセプトがある。
男子であればループorツッツキ→カウンター系orドライブ→カウンターの流れを安定化させること。
女子であればループorツッツキ→早めの返球→ブロックorプッシュの流れを安定化させること。
さすがに経験の浅くスイングスピードの少ない女子にちょっと距離をとってカウンターしろ、というのは酷だが、前陣でストレートプッシュをすることくらいはできるだろう、と。
引き付けてラケット下側でインパクトすることから教え始め、台上でのバック系技術、両ハンドフリックを仕込み始めたあたりから、全体的にブロックが上手くなり始めたあたりでシステム多球で「打たれこみ」の練習をさせた。
とある女の子に対しては「打ちたいです」という言葉を無視し、二日ほどひたすらブロックをさせ続けたところ、明らかに待ちのタイミングがわかってきたような変化を見せた。
それ以後フォア系の技術を教えても十分に待てるようになり全体的な技術向上が見えるようになった。自分から打つ為に待つことを効率的に覚えるためには、早いボールをとれるようになるために早いボールを浴び続けブロックできるようになること。早いボールに対して待てるようになったら遅いボールに対しても待てるようになることが重要であるとわかった一例である。
私なりに目的意識というか、段階的な発達過程を想定したうえで多球でぶち抜きに慣れさせたこともあったわけだが、どちらかと言えばブロック待つ意識を覚えさせるためである。
ところがどっこいブロックだけに非ずドライブまで待って打てるようになってしまった(偶然に)。
この原因として考えられるのはフォアドライブとフォアブロック、バックドライブとバックブロックそれぞれの待ちの設定を同じものにしたからか。
技術それぞれに通ずる共通の論理を持たない指導者が、何ともなしに教えてしまっては「○○は待てても○○は待てない」のように、技術間の乖離が生じてしまう。
技術間の乖離に関しては予めの技術指導で解消し、引きつけと3Hitを覚えさせることはできていた。
そこで待てるボールの適応範囲がこれまで以上に早いボールも含むことができるようになってきたことで、ブロック技術の向上に釣られてドライブも上手くなったと考察できるのではないか。
また、とりあえずと思って三年経験者であれば全員に対フリック&ループへのフォアストレートカウンターを多球の打たれ側で徹底的に練習させているが、ほんの4回ほどの練習で自然と試合中に狙えるようになってきている子も出てきている。
このフォアストレートカウンターというのも十分な待ち、十分な引き付けが出来ないと習得することが困難な技術の一つである。
フォアストレートカウンターができることは、すなはち十分に引き付けるスキルが身についたことの証と言い換えることもできるだろう。
その子時代ブロックはボールを見てから待てる為ボチボチに安定しているし、下がってかけ返した方がいいなんて言い始めるほどに早いボールが見えるタイプ。
この前なんてゴリゴリに打ちこんでる高校生くらいに早い一発をブチ込んでもカウンターで返されてしまったし。
少なからず早いボールに対応することができるというのはそれだけで才能があると言っていいし、基礎的な技術の安定化や、より高度な技術の習得に必要不可欠である。
それ故に多球練習においては、打つ側の練習の意味合いだけでなく、受け側を作りブロックやカウンターも練習させ、同時に練習させたい。
できるならば難度の高いフォアストレートへのカウンタードライブまで覚えさせたいもの。
単に受け手を作るという意味でも多球練習の意味合いは大きく異なる。
ただ返すだけではない、十分な待ちの感覚を覚えることを一番の目的として設定したい。
また、他にも技術習得を効率的にする為にもシステム多球は有用であり、例えば
①球出し側
フォア前に下回転
②打ち手A
フォアにフリック
③打ち手B
フォアにカウンタードライブ
④以降オール
なんていう風に一連の流れに絞って練習したり、1球練習でボールを拾ったり、サーブレシーブでうまくいかずにポコポコしているような時間を大幅に短縮して、フリック対カウンターの流れに絞って練習することが可能となる。
ただ「こうした試合を意識した流れを自分でデザインして多球練習をしなさい」といっても選手だけではなかなか思いつかないだろう。
指導者側から選手のレベルに見合ったシステムを構築・提示し、その際に気を付けるべきことまでセットで教えてからやりたい。
また、カウンター系の多球練習をする際に、絶対に忘れてはならないことがある。
それは二種類のスピードで待つことである。1つは単純なボールスピード、もう1つはピッチ。
例えば
①球出し側
フォアに下系のボール
②打ち手A
ループドライブ
③打ち手B
フォアカウンター
という設定でシステム多球をしているとする。
この際球出しをしていて、気になるのはループドライブの質に対してどういうカウンターをしているか。
ループという設定でボールスピードそのものは遅いながらも、速いor遅いピッチでのループでリズムを崩されて前に振っていないかが気になるところ。
一見同じ前にふってのオーバーミスであってもピッチスピードに対応できずうまく待てなくて、対するボールの質は違えど同じミスをしてしまうことが多く見られる。
カウンターをする際はボールそれぞれに適切に待って対処することが求められる。
同じ球種に対してただ待って振って単調に入るではなかなか練習の意味は少なくなる。
それ故に多球練習でも打ち手側に球質差を求めたいもの。
ただ、意識的に球質差を作れといってもなかなか難しいし、それでミスをされてはカウンター練習が成立しない。
できるならば変化を付けるのは球出し側でしたい。
球出し側が「必ず出すから絶対ループして」と設定した上で、微妙に出るボール~深めに出るボールまで差を付けて立ち位置を見ながらピッチスピードにバラつきを出していく。
そうすればドライブする側はどんなボールが来てもしっかりかけて入れることに終始するだけで、球出し側がつける変化によってピッチに変化をつけることが可能になる。
勿論打ち手の上達によっては打ち手に変化を求めるのもいいと思う。
だがなかなか変化をつけろ言われても上手くいかない場合は、球出し側からの変化でも球質変化はつけることができる。
まだまだ書けるネタはあるが本記事はこの辺で。
多球練習を複数人数でやるシステム多球は、非常に奥が深い。
考え方によっては球出し側が何人もいる多球であるわけだし、5球目、6球目で何かを狙う練習を設定した場合は変化の数も相当に多くなる。
今回紹介したのはほんの一例であるし、昔から多く取り入れている方も大勢いらっしゃるかもしれない。
しかして「無理矢理短期間で伸ばす練習」と位置付けるシステム多球はどのポジションでも面白みがある。
読者さんも是非とも取り入れ、面白いパターンなんかを見つけたりしたら教えて頂きたい。
みんなで多球を楽しもう。
コメント