この試合は見どころ満載。

中でも二人の選手のこれまでとの大きな違いを説明する。

カウンターを愛し、カウンターに愛された男丹羽。
先の世界選手権でもカウンターお化けっぷりをドイツ・ドルトムントにてこれでもかとひけらかしてきたわけだがジャパンオープンでも如何なく発揮している。

今大会顕著に見られたのは、馬龍に打たせる技術
よくもまあこんな大胆な手段があったものだ、と思うがこの作戦は県大会上位~全国大会1、2回戦レベルで上手側がよく使う戦術。
それは
「ツッツキをブチぎって、質の低いループドライブを催促し、それを受けまわしたり、カウンターしたりする」
戦術である。

本来馬龍の方が上手であるが、ノーバックスイングでカウンターが打てて馬龍のドライブもまずまずt目れる分、ループドライブをさせる展開においては丹羽は上手を取れる。

といっても丹羽が毎回ツッツキ戦術でルーズなループドライブを貰えるかといえばそうでもない。

ただ、丹羽には「チキータ」「ストップ」「質の高い打たせないツッツキ」「質の高い打たせるツッツキ」と四択がある。

そして、質の高い打たせるツッツキに関しては、ヨーロッパで使われることが多いのだが、日本式の前陣卓球において使われることは多くない。

ブチギレツッツキから中陣でカウンターには慣れているが、前陣でカウンターとなれば求められるループドライブの質も違うし、馬龍としても初めての卓球だろう。

しかも、バックで回り込んで「ミユータ」に見せて、ブチギレのツッツキである。

馬龍も面くらったみたいに、その次のカウンターから前後に揺さぶられ、距離感が合わず(ボールや台のせいもあるかもしれんが)効いているようだった。

これまでに無いツッツキの切れ味で馬龍にクロスへの強打を強要し、それをカウンターして展開勝ちした

おおよそ丹羽の持っているカット性ブロックや、ストレートへのカウンターにも繋がる新たな択。
ミユータやリフトなんかも使いだすに違いないと確信させた、丹羽の進化である。



また、馬龍のバックにも変化が見られた

私の持っていたイメージとして、馬龍はバックで一発でぶち抜くというよりも、回転をかけて相手にミスを誘うかフォアの一発に繋げて連続攻撃で点数をとるものだと思っていた。

しかし、今回目立ったのは馬龍のバックのボールスピードが一回り早い。
ただ単に丹羽との試合で前陣対前陣で勝負しているからかもしれないが、やっぱりボールが早い。
ただ打たれないよう安全にかけてチャンスボールを待つというよりかは、プッシュ系の打法で台奥を狙う場面も多いし、それこそ日本発祥の高速卓球に近い面移動を起こさないバックドライブが多くみられる。

そもそも最近の中国選手でもバックドライブには2種類ある。
一つはこれまでの安定重視の馬龍系。回転で飛ばすタイプ。
もう一つはファンやLiang Jingkunに代表される最小の面移動でコンパクトなフォームからラバー性能を生かしてミートで弾いて飛ばすような新型系。最近の丁寧もこっちよりか。スピードで飛ばすタイプ。

これに方博のようななんともいえないマネできないもの等が例外としてある。

こう分類しては見たが、馬龍が対丹羽ではスピードで飛ばす感じのバックドライブを多用していた。
世界チャンピオンだしどっちも使えるのは当たり前かもしれないが、超反応で得点というよりかは粘り強く頑張って点数を取る馬龍が、超反応を要求されるような卓球をしだしたというのは何かの転換点なのではないかと邪推したくなるところ。


いずれにせよ、みうちゃんの高速卓球と、最近の張本、吉村和弘の革新的なチキータ・バックドライブの威力が中国卓球に影響を与えているというのは間違いないだろう。


男子中国に対してもその影響は今後見られてくるはず。



世界をリードする技術を持つ日本であるが、勝負所でやらかして負ける場面も流石に多い。
日本人の性格としてそういった負け方をする選手はどのスポーツでも多い印象ではあるが、少なからず焦っても点数が取れるような技術・ハメパターンを早く開発した方がいい気がする。

丁寧の対上へのサイドを切るプッシュ系レシーブとか、リフト、ミユータあたりなんかは極めてしまえば勝負所で来るボールをチャンスボールだけにすることができるだろうし、焦っても上記の技術でサイド狙って次に来たボールを前で張って空いているサイドに返して、その次まで待てれば決定的な一発を打てそう。
三球目においても出たら打つ、出なかったらフリックみたいな「自分から安定して攻めきれる」技術を研究した方がいいのでは。

日本選手でフリックでエースをねらえう選手は意外と少ない。
所謂ミート系、スマッシュ系は日本選手は苦手な傾向があるし。
丹羽、吉村兄の浮いたボールへのフリックミスは結構試合でも見られることがある。
張本やみうちゃんなんかは対照的に浮いたボールに対してめっぽう強い。高速卓球を浸透させるにはフリックで安定して一発が出せるようにすべきかもしれない。
中国選手は浮いたボールをフォアフリックで仕留めるのが上手いし、そこで差がついてしまう試合も数多く見てきている。




以上のまとめ。
丹羽選手、馬龍選手の卓球の変化から、今後の卓球は日本主導で変化してくるだろう。
そんな中で日本がより一層活躍するためには、一発に確実につなげられる展開を数多く持つこと。
そして、その一発を一番早く打つ為には台上の浮き球を無視してはならない。
フォアフリックやミート系は日本選手は弱い傾向にある。
一方でそうした技術を極めた選手が日本から世界に出つつある。
「より早く、より速く、より安定して」
これができるようになった時、真の高速卓球が完成するだろう。