先日、論文の抄読会でパワポでまとめたものを発表してきた。
「ゾレドロン酸の12週投与と4週投与では効果は同じくらいか」とざっぱにいえばこんなタイトル。
4週投与は広く一般に用いられてきた中で、投与間隔に関してこれまで論じられてきていなかった。
そこで各群共に1000人弱を集めて効果は同じかどうかを調べた研究であった。
12週投与が4週に対して非劣性であることを示すことが目的で、ありとあらゆるネタで比較し、結果的には非劣性でしたということを示したのだが、発表後に教授に頂いたコメントが興味深かった。
「非劣性を示すのはとっても難しいんだよ。これだけの人を集めないと劣っていないと言い切ることは難しいんだ」
統計学的な話なのかもしれないが、論文のネタによっては60人とか100人とかで新薬は非常に効果的だという論文が世の中に溢れ返っている一方で、劣っていないことを示すには膨大な数がいるという。
それこそバイアスの話なのかもしれないが、「いい!」というより「わるくない!」と言い切る方が難しい。
確かにそれはなんとなくわかる気がする。
というのもこれは卓球の話の前振りだというのは読者の方々はお分かりだと思う。
今回提示したい動画はこちら、皆さん御存じ?次男&部長チャンネルである。
次男&部長
試合動画
レベルとしては地区大会でちょっと勝てるくらいのレベルかもしれないが、非常に見どころ満載である。
なぜそう言い切れるかといったら、理解不能な打法から微妙なボールが理解不能な安定感で繰り出されることにある。
正直なところ、この動画を見る度に私は感心させられる。
見たところ卓球の指導を受けた事のある人のフォームでも、戦い方でもなさそうだし、何より我流でこれまで続けてこないとたどり着けない境地のフォームに見られる。
4スタンス理論的に当てはまらない自由な体重移動、リズムを持てないような待ち方、ダイナミックなフォームに似つかわないスイングの弱い部分での打球
どのフォーム、どのボールにおいても入るべき理由が必ずあるはずで、入っているということは研究をし、自分の糧にしなければならない。
彼らがしている卓球は私の研究の本筋から明らかに外れているもので、彼らを解明することができればより深く卓球を考察することができるはず、そうつまりは私にとって強烈なtext bookなのだ。
私が普段教えている後輩達からも学ばされることが非常に多いが、それと同等の価値がある動画。
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これも上手い人とばかり打っていては気付くことが無かった要素。
卓球研究には色んな人、いろんな戦型、いろんな技術をもつ人が必要である。
「非劣性を示すのはとっても難しいんだよ。これだけの人を集めないと劣っていないと言い切ることは難しいんだ」
卓球においても弱いから下手だ、とは決して言い切ることはできない。
本流から外れた技術が、決して劣っているものだとは言い切ることもまたできない。
なぜなら、その打法はトッププロ、有名指導者たちが知らないものである可能性を証明しきることができないのだから。
本当にそれを証明しようとしたら、それこそ数を集めなければならない。
上手い人の動画を見るのもまた勉強、そうでもないひとの動画を見るのもまた勉強である。
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