3Hitを理解した今、初心者にバックを教えるとどう変化するのか

今回はそれを実験すべく、誰からも卓球を教わったことの無い初心者三人に対し、バックから始まり、ツッツキ、フリック、スマッシュ、サーブ、チキータ等広く指導した。二人は女子、一人は男子。

バックハンド系の指導手順は以下の動画
平岡氏のバック
フォアハンド系の指導手順は以下の動画
平岡氏のフォア
を参考にした。流石の平岡氏の指導動画である、わかりやすい。


まず指導をするにあたり、簡単な物理的説明から入った。

回転に関して
「回転をかけるということは、ラケットの上下方向の運動を行うこと。ボールの進行方向と同方向の力がインパクト前から伝わるような運動を行えば行うほど、ボールは飛んでしまう。同方向の力を加えない場合、ボールはラケットにくっつくようになるから、上下方向で回転はかけやすい」
色々間違っているかもしれないが、この程度に。 

続いて打球時の面と進行方向に関して
ボールの上半分をインパクトした場合、ボールは上には飛ばない。
ボールの下半分~真後ろをインパクトした場合、スイングの進行方向によってはボールは上に飛ぶ。
また、ほぼ同じことであるが、面の向きが上を向いている場合、インパクトしようとした際、ラケットは自然とボールの下半分に当たる。それ故にボールは上に飛ぶ。
面の向きが下を向いている場合、インパクトしようとした際ボールの上半分、もしくはインパクトの仕方次第でボールの下半分~真後ろに当てることができる。その際はそれぞれに応じてボールの進行方向は変わる。
この説明をした際、「なぜ面は下を向いているのにボールの下半分~真後ろをインパクトすることができるのか」 とした質問が飛んでこなかった為、フォアの強打を教える手順を一つ忘れてしまった。
この問いに答えることができる読者がいるならば、大方強烈なフォアドライブを全コースに打ち分けることができるだろう。 

これに加えて、3Hit的な安定した打球点はどこかをかみ砕いて説明した。



実際に指導してみて興味深い点がいくつかあった。

 まず一点目として、3Hitをすんなりと受け入れられたことだ。
最初の一時間は指導をせず、他の後輩に指導させ、それで習ったことを実際にやってみて、と言ったところ、全てのフォームにおいてボールにラケットを当てに行く運動が盛り込まれていた。
無論、そうした運動をすることは不可欠ではあるのだが、当てに行く運動はほとんどが前に振って当てる運動であったということ。
 前に振ることは間違っていて、引きつけることが重要、引きつける際はラケットとボールの距離が10cm程度になるまでひきつけ、そこから前に振る運動を入れるとより安定して回転をかけられると説明した。
すると、おおよそすべての技術において、多球練習の際は安定して入れることができるようになった。
指導していた男子一人は、最初フォアから引きつけることを説いた為、バックの指導に移る際、自然と「これも引きつけたらいいんですか」と質問をしてくれた。非常に優秀。卓球初心者でありながらもバックドライブを多球においては安定して強く打つことができるようになった。
女子二人に対しても同様に指導した結果、少し肩回りを使うのが苦手そうな子は強いボールは打てないにしても安定、肩回りを使うスポーツをしていた子は経験者が打つようなバックドライブを打てるようになった。
ここで、3Hitの感覚で引きつければ強いボールをブロックすることができる、と説明し、なるたけ強いボールを多球で出してブロックできるか実験してみた。
肩回りを使うスポーツをしていた子は早いボールを見慣れていることもあってか、自然とひきつけてブロックをすることができた。(できるまでに、面の説明等紆余曲折があったが)
ただ、早いボールに見慣れていない子は流石に見えないから待てない。ここは説明だけではどうしようもないものなのかもしれない。


 二点目として、一つの打法を教える際に、運動を教えることは簡単にできてもラケットのどこに当てればいいか教えない限りは均質な効果は得られないということだ。
最近平岡氏が説明し始めたCC(comfortable catch)理論のような、各フォーム、各打法、各技術には適切に当てるべき場所が存在する。
長く卓球をしていると経験的に当てる場所がわかってくるため、あまり意識しなくてもできるし、打法を研究していれば、その打法を成立させる為にラケットのどこに当てればいいかは自然と理解できてしまう。
それ故に、打法説明をする際に省いてしまう場合が多々ある。
そこで、平岡式のフォア、バックをアレンジして指導した際、ソフト経験者の子は最初から経験者ばりの球威あるボールを出せた一方で、あまりスポーツ経験の薄そうな子は強いボールを出すことができなかった。
そこでフォアドライブの際は、ラケットの下半分、バックドライブの際は、ラケットの上側、フォアバックツッツキ・サーブの際はラケットの下半分に当てることを意識するようにと言ったところ、これまで山なりの某球しか行かなかったが、鋭く勢いのあるボールを出すことができるようになった。

私の持論として、「感覚からついてくる打法もあれば、打法からついてくる感覚もある」といった唯感覚論および唯打法論たるものがあるが、今回推したいのは後者の方。 
勢いのあるボールを成立させる為には、打法の不備を無くし伝えることで、勝手に感覚の良いボールが出せるようになる。

バックドライブを指導するにあたり、擦るだとか弾くだとかいう概念はこの度は一切教えなかった。
ただ、肘を下げてラケットヘッドを上に向けてる際にインパクト、その際に前後運動をなるたけ入れないように、上方向のスイングスピードが速くなるようにする。
多少条件は多いが、これでバックドライブの土台のイメージを掴んでもらった。


 三点目として、サーブにおいても感覚を完全に無視することができるということ。
3Hitに気付く以前は、よくあるようにボールの下半分をこする、できるなら真下をこすることが下回転をかけるうえでは一番重要、あとはスイングスピードを早くする、なんてことを平然といっていた。
だが、今回は3Hit的下回転サーブ、「ボールの下半分をボールとラケットの距離が近くなるまでスイングを我慢し、近くなってからスイングを始める、この際、ラケットの下半分でインパクトすることで、前方向の飛距離を確保する」と説明してみた。
すると、肩回りを使うのが苦手そうな子の方が切れた下回転を台中で2バンするように出すことができた。

「卓球未経験者がいきなり下回転サーブを出せるって、異常な事態なのでは、、、? 」

そもそも出せずに卓球人生を終える人もいるのに

少なからず、感覚的な部分を指導しようとするよりかは、どういう運動をするべきかを指導し、理想ムーブになるよう調整していった方が、感覚的な技術と呼ばれるものの多くは習得しやすくなるらしい。

「前に振らないように前に飛ばす」

この矛盾に満ちたように見える命題への挑戦はやはり上達への近道であろう。


 四点目として、飛ばす為にはボールの横から入るのは不可欠であるということ。
これに関しては相当に考察してきたが、尚更それが顕著に見られた。 バックドライブで顕著であり、回内位を保ち、ボールの左側から肘を落とす運動+手首を多少返す運動にてラケットを起こすことは鋭角面を保ちつつインパクトできるため、ボールの弾道を低くそれでいて強く返すことができる。
初心者であってもこの条件を満たせている時の方が力強いボールを出せていた。


 五点目として、何も知らない方が難易度の高い技術を覚えやすいということ。
フォアフリック、バックフリック、チキータなんかを教える際何も知らない方が手順を簡略化して指導した際のみ込みが早い。
凄い技術だと知っている方が先入観が強くなり、実際の運動と理想とする運動の解離が生じやすくなっってしまう。
単に3Hit的なフリックを教えて見れば初心者なのに対下に強くいけるし、怖がらない。
10年経験者にあれだけ教えても理解されなかった安定感のある条件も簡単にこなしてしまう初心者は恐れを知らない。
下手に自分で覚えようとする前に、その技術のベースとなるものを最初に植え付けてしまった方が上達の促進につながる。ベースさえ本質を掴んでいればほっておいてもあとは勝手に上手くなる。(勿論覚えてくれるのが前提ではあるが、、、)

 六点目として、動くと何も入らないということ。
それはそうか、とは思われる方も多いかもしれない。
勿論多球でも、一球練習でも適切なタイミングで適切な運動を行えれば入るよう配球は調整してある。
だが、流石に動くと待ちの感覚であったり、ボールの質の認識であったりは難しいみたいで。
実際「練習プロ」と呼ばれる選手が私のチームの超大多数を占める。
練習で上手くても試合でできなければ意味がない。
試合で使うには打法を理解し、どういうボールに対してその打法を適応させられるのか、日々の鍛練と研究が必要となる。
それを要求するのは酷なものかもしれないが、とりあえずは今良いボールを打てる喜びを理解し、卓球を楽しんでもらえればいいかとは思う。


以上、現在研究中のテーマを初心者指導に使ってみた経過を述べた。
間違いなく有用であり、これからも研究を続ける必要はある。
フォアドライブに関しては流石にある程度打ちこまないと指導ができない、というよりフォアドライブ指導が一番難しいことを実感した。
使う関節が増える運動は安定感が生まれる一方で、関節運動域が人それぞれで違うため、ある程度寝かせてあげないと正解択が見つからないかもしれない。
一方でバックドライブ指導は非常に簡単なものであった。
初心者からバックドライブ、チキータは暴挙でなく、むしろ超一般的になるはず。
ジュニア世代のバックハンドの上手さは指導の手ごたえからしても納得できるものであった。
だが、二点目、四点目の条件を安定して満たせるよう指導するのは難しい。
今後とも研究を続けて、本ブログにて考察をしていこうと思う。