試合中に楽して勝つ、安定して勝つ為には相手の卓球を読み取りにいくことが必要不可欠である
具体的にどういうものを読み取るか
大ざっぱに言えばその人の卓球の「設定」である
考えられた設定であったり、何も考えずとも自然と作られた設定がある
どんなレベルでもまず最初に考えるだろう戦術として、フォアとバックだったらバックに集めるといったものか
サーブ側A、レシーブ側Bとした際の思考を比較すれば
(Aサーブ時)
A:短いサーブをバックに送るとバックにきやすい
B:Aは基本的にバックハンドを振ってこないがフォアは振れる。簡単にフォアに送ると打たれるかもしれないから、まずバックに送る

この段階ではAに自分のバックが弱いからバックに来やすいという発想は無く、多くはこのサーブを出したらバックにきやすい程度の思考しかない。

(A三球目時)
A:回り込んだら打てるボールが来たので回り込んでドライブをしたい
B:回り込みをされた。ブロック?カウンター?コースは?

分岐を書き始めるとキリが無い為この程度にしておくが、AとBであればまだBの方が考えている節がありそう。
しかしてここで回り込みをされた瞬間に、Aはバックが弱いから三球目で回り込んでくる設定であると言える。
回り込んでくることを前提にしてどうやって崩していくかをBは考えていく必要性が生まれてくる。
私がBであればとりあえずバックでもサイド気味に送りドライブのフォームを観察し、フォアにツッツキを送った時に打球点が前気味か後ろ気味かを判断し、ストレートが打てそうなフォームかどうかを考察。ストレートがこなそうであればナックル系のボールをピッチ早くフォアに送りカウンターを見せた後にツッツキの長短変化でチャンスボールを誘う。そこで全部強打してきて不利になるようであればチキータ、リフト、フリック、回り込み等攻撃的技術を使い点数を取りに行く。

仮に、相手にバックでの安定感の無い前提での攻め筋であるが、正直そんなレベルの相手との試合であればサーブゲーなり、チキータ一つで何もかえって来なかったりしてしまういわば県大会1、2回戦レベル、医歯薬でベスト64以下のレベルで考察の余地は無い。

一通り穴を無くして県のランカーの高校生とも勝負できるレベルの相手の設定を読み取る方法を考察していく。


(例1)
実際に私が試合をした事例。
相手は今大会でも優勝候補の一人。フラット系強打が売りで、バックに自信あり。
コース取りが丁寧で、ボールの質も低く早く、うかつに回り込んだらそれを見られてストレートを狙われてノータッチといった場面が多くあった。
サーブはとりわけ切れたものが無いが、ナックルサーブが打球後に遅れて飛び出てくるようなトリックがなされており、ボールの2バウンド目を見てからでないと打球点に入れずチキータで強くいけない。
先に一発をブチ込めれば勝負できるが、長いサーブから展開しようにも綺麗に低く返され強くいけない。
持っているサーブの大方を使った結果、どれも上からいける展開を見込めず、諦めて短い下から起こして勝負しに行くが、相手方の方が安定感、フットワークがあり、先に下げられて詰み。


私のベンチではサーブゲーをするべきだったのでは、とアドバイスされたが、前述したように逆に早いピッチで低く返される為、全くもって不利。
先に起こして頑張る他無かった。団体戦ならまだしも、これは個人戦。練習してきた普通の王道卓球で行くならばこれしか勝ち筋は無かった。




あくまで王道に勝ちに行かず、外道の勝ち筋で勝負するならどうしたらよかったか、試合後に反省している中で気付いたことがあった
相手はフラット系技術が上手く、起こす技術に強いボールは決して無かった
基本的には前でプレイしているため強いボールを長いツッツキに対して行うことはできない
となれば、長いツッツキから強打されず、起こしたボールの質も低いのならば、そのボールを狙ってカウンターすべきではなかったのか
そう、論点は


「私が起こさなければどうなっていたのか」


サーブをミドルに短いブチ切れの下とナックルで縛り、レシーブは何が来ても切れたツッツキを長くバックに送る
となれば浮かしたら自分から回って打って勝ち、ツッツキをされたら向こうが起こすまでハーフロング~ロングでツッツキで粘り、甘く起こされたのを打てば勝負できていたのではないか

実際私に勝った彼の負けた試合を見ていると、右のペン選手にうまくツッツキでいなされ、強打を封じられていた
男子選手によくある上系の繋ぎのボールの質は高いが、下系の繋ぎのボールの質は低い
高くて切れたボールに対しては強くいけるが、低くて切れたボールを試合でされたことが無く、練習でもあまりされたことの無いだろう展開であり、欠点となっていた
(以前シェークハンズの動画でも見た日本のトップ選手でも生じる現象である。張本君の強さもツッツキ多用に起因するものであったりと、世界レベルでも通用してしまう盲点。)
自分の得意な戦術を封じられた彼は、試合半ばからサーブレシーブから崩されたり、バック対オールでひたすらバックにハーフボレーをつながれ質の高いボールを送ることに専心せざるを得ず、そこで一瞬でも緩いボールが出でしまうと強打されるといった風に、生命線を削られて苦しい展開を強いられていた。



私が真に反省すべきは、相手の特長を知った上で相手側の勝ち筋も理解していたにも関わらずあえてそこに挑みにいった慢心である。
事前情報でバックに自信があると聞いていた為、それならばこちらも得意の一撃のバックドライブで勝負して勝とうとし、打てるボールが見つからず負けたのだ。
しかして、相手の弱点は得意な技術のすぐ裏に隠れていたのだ。


(例2)
A:N県ベスト16~32の選手
B:F県ベスト32の選手の試合
前者は後輩、後者が相手側だったが如何せんYG県同様の強豪県出身であり、その中でも超強豪校に次ぐ2、3番手校のレギュラーで九州大会にも出ている選手。
Aのスタイルは一発強打。ボールスピードだけでみればインハイ16選手の比ではない位に早く、ループドライブで緩急をつけられる。並のスピードドライブであれば大方カウンターでき、両サイドを狙える
Bのスタイルは両ハンドでもフォア寄り。バックドライブの一撃は無いがそつなくすべての技術をこなす。フォアの一撃はそこまで早くないが、引き合いになればミスは出ない。両サイドを狙える。練習はほとんどしてないらしく、前日カラオケオールを敢行、しかし調子が出た際の卓球の質は非常に高い

A、B共に浮いたら一発を打ちあい、三球目~の展開が強い方が得点を取る様相。
Aは点数の取り方が期待値的である一方で、Bの方がサーブレシーブで軽々得点したりと技術が豊富。

1ゲーム目にBが取り、2ゲーム目にBの回り込みが炸裂、Aの攻めも大方対応され上回転系のボールに対して強く強打され続けて3-6されたところでタイムアウトを取った。

取った理由としてはあまりにも強すぎて違和感だったことが挙げられる。
いくらなんでも強すぎる。練習してなくて、体調不良で、いくらやる気があるにしてもここまで強いのは何かしらA側に問題がある。
タイムアウトを取って会話をしているうちに試合を振り返って気付いたのが

・上回転系に対して強い
・回り込み強打が出来ている多くはバックでもバックサイド寄りでは無い範囲
・強くいけている範囲は卓球台全体の右4/5の範囲
・ストレートにボールが来ない
・シュート系の強打を持って無く、カーブ系のタッチがほとんど

 
以上からとる戦術としては
・ バックにボールを送る際はよりバックサイド寄り
・フォアサイド狙いでツッツキを低く切り、持ち上げるか強打するか観察。予想では強打はまず無いだろうから、ループをカウンター狙い

・フォア対フォアで勝負する際は強いボールが来づらくする目的で大きく動かし、ストレートのリスクも減らしてから
・ カーブドライブは案外待てればストレートを狙いやすい。一度フォア対フォアになった際、きっちり待ってミドル~バックに弱くてもいいからカウンター。

アドバイスをしたのは上の二つ。下の二つは言わずとも自然とやり始めたもの。
その結果、ツッツキは予想通り有効で、ほぼほぼ打ちミス。入っていてもカウンターの餌食となっていた。
なぜツッツキが有効と判断したかと言えば、下系の打法と上系の打法が変わるタイプであり、そういったタイプがほとんどである。
私が指導している人には待ち方、打球点共に回転関係なく強打できるようにしているが、指導されなければ知らない場合が多い。
また、センス系の打法が得意な選手であれば対上と対下で打法を自然に身に付けているため変わることも多い。
事実、Bは前年カットマンと試合した際対下に強くいけずループを散々し続けた挙句負けたのも確認していた。
更には練習をしていなくて、周りもみんな強い相手ならばまずは上回転系のラリーから入るのが当たり前だし、対下を持ち上げるなんて地味な練習に気が向くことの方が少ない。サーブも上系、ナックル系が多くバックで持ち上げるのが上手い為、尚更下回転系に疎い可能性が高かった。


ツッツキが有効手となり、逆転。そのゲームは捲って取ることができイーブンに。そこからはサーブレシーブが双方共に不安定で、急激に低いレベルの試合に転じ、よくわからないうちにフルゲームとなった。
最終ゲームだし、ツッツキで嵌めて勝ちきろうと提案したところ

いや、ツッツキできるボールきたらバックでストレート抜きたいです。おしゃれに(輝いた目) 

 
いやいやいや、勝ちきってよ、、、とも思ったが、まあ個人戦だしいいかと静観
一切ツッツキをしてくれなくなり、Bの爆発したポテンシャルを抑えきれずフルゲーム9点で敗戦


例1、例2共に負け方が自分のしたいことをして負けたとしか読めないだろうが、しかしながらその時の相手の状態、相手の戦型をしっかり読み取れば有効手が見つけられた例といっていい。
後付けとみられる場合もあるかもしれないが、実際私がベンチに入れば後付けではないとわかるだろう。

さて、Aに勝ったBはその後どうなったか
前年負けたカットマンをストレートでリベンジしたらしい
え、どうやって勝ったの?と聞くと相手の三球目を封じてあっさりだったと聞く
確かに練習してないにしてはバックが異様に上達していたし、レシーブで有利になっていれば普通に勝っていてもいいかもしれない。
しかして、何本もツッツキを浴びせられて、「強打の練習をする機会」があり、その分で一発を打つ方法を思い出して入ってしまったのではないかとさえ思う
そのカットマンのカットは少し切れている程度だし、Aの方がツッツキの変化量は多い



まとめれば
自分の得点源を探す際は、まず相手の得点パターンを考察する。
その得点パターンを封じようとする際に、相手にミスを誘うルートにするのか、自分から一発を狙うルートにするのかで前提が異なる。(その途中でミスをしてもらえればそれはそれでいいが)
正解ルートは大方相手が練習をあまりしていない、相手が気付けていない「穴」を狙う
コース取り、高低、回転量等様々あるが、相手の打法、技術量、立ち位置、メンタル、戦術等から総合的に考察していけばどれが正解かわかりやすい


考察するには自分に知識が無いといけないし、それを実践できなければいけない
中国人が強いのは、強い中国人がベンチにいるから、水谷が強いのはアドバイザーが優秀だからと言うのは明らかであるが、我々一般レベルにおいては正確な観察眼、正確な考察力、正確な選手理解があれば十分なアドバイスができると考える。

大学で普段卓球をしている私であるが、この一年はほぼすべての部員の卓球に口出しをしてきた。
それ故目を瞑れば誰がどういうフォームでどういうボールを入れられるのか、どういうボールをミスするのかまで大方わかる。強いて言うならメンタル面と、ここ数週間でどれだけ進歩したかくらいはわからないくらいか。
今年初めの初心者に対してであってもよりよくできるようなアドバイスを送れたし、六年間卓球を見続けてきた同期には、彼が気付けていなくて私だけが気付いている、「彼ができる彼の知らない卓球」をさせて、普段勝てない相手に勝たせることが叶った。



選手が変われば、相手が変われば有効なアドバイスは変わっていく
「頑張ってかけ続けろ」が有効なアドバイスであるのは、言う人の威厳(オーラ)がどんなものかに依存してしまう。

私みたいに威厳も雰囲気も無い者は見えないものに依存できない。ならば見えるものに依存する他ないのだ。

本当の卓球の世界は、今見えているものにしかない。

それ故に、見方を知らなければ何も見えない。

感覚が蔓延る卓球の怖さは、見えないことが多いことに由来すると断言していい。 

そうした卓球の見方の考察をこのブログにて続けていきたい。



そして、その一方で見え方の議論も続けていく。

試合中の応援が
「どんまいどんまい」と険しい顔でいるのと、 
「おっけー」と笑顔でいるのとどちらがいいだろうか


「enjoy table tennis」

がスローガンである我々としては、医歯薬系の大会に出る度に相手が弱く見えて仕方がない



天衣無縫の極み



漫画のチートスキルであるが、そこに誰でも意図的に入れるはずである
少なからず私の大学で入れていない人は本当に弱いが、そこに入れる人は強い。
プライドの高いだけの者は入れないが、謙虚な者はすぐに入れる。

その境地に入る為に個人が行うべきこと、応援が行うべきことは違う

スピリチュアルなネタであるが、スピリチュアルなりに文章にして今後考察していく



相も変わらず考察すべきネタ多すぎる

やっぱり卓球はするだけでなく、考えているだけでも十分に楽しい
そう思う、燃え尽き症候群中のバルサミコでした